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2024年1月14日号
政治 北朝鮮 「露出」が増える金総書記の娘 韓国は「後継者」と評価を変更
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 軍事偵察衛星の発射を成功させ、ICBM(大陸間弾道ミサイル)も発射するなど着々と「核兵器大国」を目指す北朝鮮。2024年も周辺国の安全保障を脅かしそうだ。

 同時に、今後の行方が気になる問題が一つある。金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党総書記の娘とされる金ジュエ氏は、後継者となるかどうかだ。

 金総書記には3人の子どもがいるとされてきた。上に長男、そして娘、下に性別不明の子ども。これは韓国の情報機関の情報だが、2211月にICBM「火星17」の発射実験場で、金総書記に同行する形でジュエ氏と思われる娘が初めて公開されて以降も、「子どもは3人で、娘は後継者ではない」(韓国情報機関関係者)と自信を見せてきた。

 ところが2312月、韓国大統領府の趙太庸(チョ・テヨン)・国家安保室長が「後継者として検証しなければならない」と発言するなど、4代目の後継者との見方が強まりつつある。米政府系の放送局「自由アジア放送」は「朝鮮の新星」「女将軍」との呼称が北朝鮮内で使われていると報道。真偽は不明だが、娘の存在感が北朝鮮の国内でも向上しているようだ。

 一方、社会主義を標榜(ひょうぼう)しながらも家父長的な伝統がまだ強く、男尊女卑的な考えが残る北朝鮮で、女性指導者が受け入れられるのかとの疑問も湧く。しかもジュエ氏はまだ10代だ。

 これについて韓国のある北朝鮮専門家は、次のように分析する。まず、早くから帝王学を学ばせているということ。これは金総書記は父・金正日(キム・ジョンイル)総書記が1112月に亡くなるまで、後継者教育を受けたのは2年もなかったことが影響していると説明する。金総書記自身が父の跡を引き継ぐ過程で相当な苦労をしたと思われ、「後継者には早くからしっかりと教育をさせる」という方針とみる。

 さらに、金総書記の健康問題も影響しているとの見方がある。20年には数カ月間、現地指導など公開の場に出てこず、死亡説も流れた。現在39歳の金総書記だが、将来を見据えて娘を教育しているとみる専門家は少なくない。

 一方、ジュエ氏が姿を見せたのはミサイル発射場や軍事偵察衛星の研究所といった軍関係の施設が多い。これに注目し、女性が指導者になった場合、軍経験の少なさが北朝鮮指導部で問題になる懸念がある。そのため、あえて軍関連施設を選んで金総書記が帯同して軍経験を積ませている可能性が高い。

 これには、金総書記の妹の金与正(キム・ヨジョン)・朝鮮労働党副部長に加え、崔善姫(チェ・ソニ)・外相や秘書役とされている玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏といった女性に、要職を任せている点とも関連する。要職に女性を置くことで、「男尊女卑」の雰囲気を薄めようとする金総書記の〝策略〟の一つではないかとみる向きもある。

「核兵器大国」をひたすら目指すというのが、北朝鮮の〝国体〟となった。それには安定した権力維持が必要だ。それゆえに、早くから子どもを〝露出〟させて後継体制を固めている―。北朝鮮は、24年も不気味な隣国となりそうだ。

(浅川新介)

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