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2023年12月24日号
政治 朝鮮半島 南は総選挙で対日関係悪化も 北は核兵器「完成」へまい進か
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 一方は日本との関係改善が進んだと思えば、もう一方は日本海に向けてミサイル発射を繰り返す――。2023年の朝鮮半島と日本との関係は変化が起きた。では、24年はどうなるか。

 まず、韓国では24年4月に総選挙が行われる。現在の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領にとって大きな正念場を迎える。

 というのも、保守系で現在の与党「国民の力」は国会で定数300のうち111議席と少数与党だ。一方、進歩系で最大野党「共に民主党」は168。与党は巻き返しを当然図るが、現状からの上積みがどこまで可能かは不透明だ。

 尹大統領は22年の就任以来、30%台の支持率を続けており、パッとしない。国民が望む経済改善も、なかなか厳しく、目に見えた成果に乏しいのが現状だ。

 野党側も人気の面では振るわない。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は、ソウル近郊の市長時代の開発計画に関する不正疑惑などで逮捕状まで出された人物。裁判所の判断で拘束されていないが、「不正のデパート」状態では有権者の掘り起こしもままならずにいる。

 しかし、選挙の結果の行方は日本に大きな影響を与えそうだ。文在寅(ムン・ジェイン)前政権が残した日本との関係悪化を、尹大統領が徐々に好転させてきた。もし総選挙で与党が勝てなければ、こうした対日外交を変更せざるをえなくなるかもしれない。

「対日外交の現在の路線は大統領の信念」(大統領府関係者)なので、そうそう変更しないという見方がある。それでも元徴用工や慰安婦の問題には、尹大統領の方針への反発もくすぶっている。もし過半数がとれなければ、対日外交に大きな変化が生じる可能性が高い。

 一方の北朝鮮は、24年になっても着々と核・ミサイル開発を進めるのは間違いない。残すは核弾頭を運搬する手段のみとの状況で、核兵器の完成が目前となっているのは否めない事実だ。また、米国や韓国とは実質的な対話がない状態が続いている。対外メッセージの内容は強硬なままだ。

 こうした北朝鮮に対し、最近では「金正恩(キム・ジョンウン)(朝鮮労働党)総書記は変わった」との指摘が韓国で目立つ。それは、自国の核開発は「対米関係の改善」のためにではなく、「核を持つ」こと自体が国是となったという見方だ。いわば、北朝鮮は米国への「未練」を捨て、とにかく核開発を急いでいるということだ。

 これは、19年2月の米朝首脳会談が決裂した後、金総書記が米国に大きく失望したことが影響している。金総書記はこれまでも「自力更生」路線を内外に示してきたが、核軍事大国を究極の目標に置き、その実現に向けてまい進しているともいえる。

 そうした北朝鮮の変化が事実ならば、日本や米国、韓国はどう対処すべきなのか。「無条件の対話」という提案だけでは、北朝鮮は対話の扉をしっかりと閉め続けるだろう。無策を続ければ、安全保障上の脅威は、ただただ増し続ける。

(浅川新介)

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