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2023年12月10日号
北朝鮮 軍事偵察衛星「発射」にのぞく、ロシアとの新たな「蜜月」関係
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 北朝鮮が11月21日夜、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を発射した。前日に日本政府などに通告した発射予定は22日からだった。1日早めたのはサプライズを狙ったのか、あるいは降雨・雪と予報されていた現地の天候のせいか。


 今回の発射で3回目となる偵察衛星発射。北朝鮮は国営の朝鮮中央通信を通じて「発射は成功」と報じた。韓国政府はロケットの軌跡などを総合的に分析した結果、「衛星は(地球周回)軌道に進入した」と発表、日本政府もこれを認めた。

 朝鮮中央通信によると、発射には金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党総書記も参観したとも伝えた。今年8月に2回目の打ち上げが失敗に終わった後、10月に再度発射すると北朝鮮側は豪語していた。遅れたものの、北朝鮮は着実に発射成功への布石を打っていたのは確かだ。

 9月には金総書記がロシア極東の宇宙基地を訪れ、ロシアのプーチン大統領と会談を行った。その後にロシアの軍事代表団、ラブロフ外相、経済使節団と相次いでロシアからの要人や関係者が訪朝していた。そのため「ロシアが宇宙関連技術を支援したに違いない」とされ、見返りに北朝鮮は砲弾などをロシアへ輸出したという疑惑があった。ウクライナ侵攻で兵器不足とされているロシアと、北朝鮮はギブ・アンド・テークの関係になり、ほしい技術を得たいのだ、という推測が広がっていた。

 現段階で本当に成功したかはわからない。ただ、北朝鮮は衛星と称するものをこれまで8回打ち上げ、2回は地球周回の軌道に乗せている。これは地球観測衛星と称したものだった。その2基のうち1基は「ロシアの力を借りて発射された韓国の衛星よりも軌道の回り方が美しく、技術も悪くなかった。北朝鮮の技術は侮らないほうがよい」と米航空宇宙局(NASA)の技術者は当時、こんな感想を持ったという。

 今回、軍事偵察衛星は軌道進入に成功したとしても、どう作動するのか。5月の最初の打ち上げ前に北朝鮮メディアが衛星の写真を公開した。このとき韓国や米国の専門家らは、外見からすれば通常の衛星より重量が軽いと指摘。衛星が撮影したという写真は、「解像度は1㍍以上」という合格基準にはるかに及ばないと判断していた。

 そのため「成功したとしても結局、国家の威信を高めるだけの国内用」という見方がある。実際、8月の発射は北朝鮮国内で「『成功した』とされている」との証言もある。一方、「解像度が落ちるとしても艦船やトラック、施設と判別できれば、十分に偵察に使える」との評価もある。

 金総書記は偵察衛星を数個発射し、「多角的に敵を監視する」と発言している。年内に主要会議の一つ、党中央委員会総会があるが、これに向けて偵察衛星発射のスケジュールや方針がさらに示されそうだ。北朝鮮と日米韓の妥協のない対決姿勢が続く。緊張と不安な状況は、まだまだ続きそうだ。

(浅川新介)

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