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2023年11月26日号
経済 全国展開狙う「資さんうどん」 藤井8冠の「注文」は起爆剤か
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 将棋の第36期竜王戦七番勝負第3局は、10月25、26日に北九州市の旧安川邸で指され、藤井聡太竜王(21)が伊藤匠七段(21)に96手で勝ち、対戦成績を3勝0敗として全8冠制覇後の初防衛に王手をかけた。藤井竜王は対局2日目の昼食に〝勝負メシ〟として「肉ごぼ天うどん」を注文したが、これが話題を呼んでいる。

 器からはみ出るほど長いゴボウの天ぷら5本と、甘辛の牛肉がのせられたうどん。これは北九州市に本社を構え、同地発祥の〝ソウルフード〟として親しまれている、うどんチェーン「資(すけ)さんうどん」の提供で、肉ごぼ天うどんは一番の人気メニューだ。同社の公式X(旧ツイッター)で藤井竜王が勝負メシに食べたことを報告すると、「北九州市民としては本当に嬉(うれ)しいな」「資さんうどん最高!」「おめでとうございます」「全国進出の時は来た!」などと〝ファン〟たちの喜びの声が次々と寄せられた。

 資さんうどんは1976年、北九州は八幡製鉄所に程近い港町で生まれた。元々は創業者・大西章資さんが「安心しろ、もうかっているうどん屋だ」と言われて知人から譲り受けた戸畑区の一軒のうどん店がルーツ。フタを開けてみれば閑古鳥が鳴く、繁盛店と言い難い店だった。当時33歳の大西氏はその店を「うどん・そば 資さん一枝店」として開店し、80年に資さんうどんの前身となる「有限会社さぬきや食品」を設立した。

 2015年7月に創業者の大西氏が死去し、後継者問題などから福岡銀行の投資ファンド「福岡キャピタルパートナーズ」が株式を取得し、18年には投資ファンドのユニゾン・キャピタルが全株式を取得した。

 そんな資さんを率いるのが18年に社長に就任した佐藤崇史氏だ。慶應義塾大卒業後、1997年にソニーに入社。その後2001年にボストン・コンサルティング・グループに転じ、消費財メーカーなどへの経営・海外戦略や新規事業立ち上げのコンサルティングに従事し、06年にファーストリテイリングに入社。グループ戦略、人事、店舗運営、社長室の責任者などの要職を歴任するという華々しい経歴を持つ人物だ。

 佐藤氏に、資さんのトップ就任の要請が来たのは17年秋ごろのことだ。創業者である大西氏が逝去してから2年余がたち、資さんのトップとしてユニゾン・キャピタルが佐藤氏に白羽の矢を立てたのだ。

 資さんうどんでは、うどんだけでなく、丼物やおでん、ぼた餅など100種類以上の豊富なメニューを展開する。佐藤氏は就任前、複数店舗で食べ歩き「味もサービスも本物」と実感した。広島県出身でも資さんには全く縁もゆかりもないわけではなかったが、「こんなにおいしいうどんがあったのか」と感動したという。

 大西氏が経営していた当時は北九州市内を中心にドミナント展開していた。ユニゾン・キャピタル傘下になってからは広域展開を計画。今年8月には岡山に初出店し、11月には関西進出を控えている。8冠独占中の藤井竜王の勝負メシとなったことが、全国展開の弾みになるか。

(森岡英樹)

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