サンデー毎日

政治・社会
News Navi
2023年11月19日号
金融 伸長著しい「ノリウッド」支援 ソニーがアフリカ映画に投資
loading...

 ソニーグループはコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)「ソニーベンチャーズ」を通じて、アフリカのスタートアップ企業への投資に乗り出す。1000万㌦(約15億円)規模のファンド「Sony Innovation Fund:Africa」を通じて、音楽や映画、ゲームなどを手掛けるスタートアップに出資をする。

 映画産業など皆無と思われがちなアフリカだが、実は、アフリカで人口最大の国ナイジェリアは、製作本数では2015年時点で米国の1・3倍となっており、現在は年間2000本を超える映画が作られる。本数でいえば米ハリウッドを超える一大市場である。

 ソニーグループは長期にわたり、世界各国で新事業創生のエコシステムに参画し、ベンチャー企業の事業成長支援に貢献してきた。16年にはソニーグループとして初のCVC「Sony Innovation Fund」を創設し、その後も大和キャピタル・ホールディングス(現大和インベストメント・マネジメント)との合弁会社で組成した「Innovation Growth Fund」(19年)、地球環境問題に取り組む企業を支援する「Sony Innovation Fund: Environment」(20年)や「Sony Innovation Fund3」(22年)などによる活動を通じて、投資専門チームによる経験と運用実績をグローバルに積み重ねてきた経緯がある。

 そして、ソニーグループは今後成長が期待されるアフリカでのエンターテインメント事業に着目、ゲームや音楽、映画、コンテンツ配信などの産業拡大も見据えて今回創設したCVC第5弾の「Sony Innovation Fund: Africa」は、主にシード(起業前)からアーリーステージ(起業直後)のスタートアップを対象とする。

 また、投資先スタートアップの探索や投資実行において、新興国での投融資活動を積極的に行っている世界銀行グループの国際金融公社(IFC)と協業契約を締結しており、双方の強みを生かした投資活動も展開することでアフリカでのエンターテインメント業界の成長を支援していく方針だ。

 元々、アフリカは旧宗主国のフランスの文化政策の一環で、フランス語圏の西アフリカ地域の一部で映画産業が発展していた。ただ、機材や人材の不足、配給システムの未整備により、庶民の娯楽としては根付かず、映画産業自体も未成熟であった。だが、1990年代以降のデジタル技術の発達に伴い、低予算で映画の製作と配給ができるようになり、アフリカ全土でさまざまな人たちが次々と映画製作に乗り出している。

 そのアフリカで最も映画が産業として成り立っているナイジェリア。映画の製作、配給、消費という一連のサイクルとして大規模に成立している。製作本数はインドに次ぐ世界2位の映画製作本数を誇り、なおかつ人口比当たりでは世界1位となり、約6億㌦ともいわれる巨大市場を擁するまでに成長している。

 今ではナイジェリアは、米国の「ハリウッド(Hollywood)」、インドの「ボリウッド(Bollywood)」と並び、ナイジェリアのNにちなみ「ノリウッド(Nollywood)」とも称されるまでに成長している。ソニーはアフリカ映画に熱い視線を投げかけている。

(森岡英樹)

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム