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2023年11月12日号
金融 東京23区の新築が1億円超え 「億ション」に中国マネー流入
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 不動産経済研究所が10月18日に発表した2023年度上半期(4〜9月)の首都圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉各県)新築マンション市場動向によると、東京23区の平均価格は1億572万円となった。年度上半期として初めて1億円超えだ。建築資材価格や人件費高騰が続く中、都心部で超高額物件が多く売り出され、価格が押し上げたのが主因とみられる。中でも21年の東京五輪・パラリンピックの元選手村の跡地に建設されたマンション群「晴海フラッグ」の購入最高倍率は266倍にも達する。

 実際に入居が始まる前に、部屋が転売されるケースも散見される。その一つが港区三田の「三田ガーデンヒルズ」という物件。地上14階建てで、再来年3月に完成が予定されている。価格は1戸あたり平均4億円。1002戸のうち約400戸が売りに出されている。これは23区で発売された新築マンションの3割に相当し、これが首都圏の平均価格を押し上げる要因になったとされる。「住所が港区で、最寄りの麻布十番駅から徒歩約5分という好立地から、既に販売された400戸もほぼ完売している」(不動産アナリスト)

 億ションを購入するのは主に個人富裕層だ。野村総合研究所の調査によると、富裕層は19〜21年に、124万世帯から139・5万世帯と12・5%増えた。富裕層が自己のポートフォリオに、資産価値の高い都心部の不動産を組み入れるのはセオリーだ。

「ここ数年、富裕層はタワーマンションを利用した節税が横行したが、国税庁の節税封じもあり、節税目的の億ション購入は急減している。その一方で増えているのが、値上がりを見越した転売需要だ」(大手信託銀行幹部)という。転売を意図した投資家や法人の購入意欲は旺盛で、先述の三田のケースでは、約3分の1が投資家や法人で占められているとされる。

 富裕層ばかりではなく、サラリーマン層でも夫婦で「ペアローン」を組み億ションを購入する動きもみられる。同ローンは一つの物件に対し、夫婦それぞれが同じ金融機関からローンを借りる方法で、物件の所有権も共有名義になる。

 スイスの金融グループ・UBSが発表している「グローバル不動産バブル指数」の22年版によると、東京のバブル指数は第9位にとどまる。1位はトロント(カナダ)で2位フランクフルト(ドイツ)、3位チューリヒ(スイス)と欧米の都市が続き、アジアは第5位に香港がランクインしている。特にハイエンド対象のマンション価格だと、東京は香港や上海、台北より下。世界の不動産市場に目を転じれば東京の不動産価格はまだ割安なのだ。

 そこに目を付けているのが中国マネーで、都心の億ションに触手を伸ばしている。いうまでもなく中国では不動産を所有しても数十年で返却しなければならない。本当の意味で所有できるのは外国の土地だけ。

「中でも日本は金利が低く、不動産の価格が比較的安いので、不動産投資で利益を上げやすい環境にある。そこに円安という追い風も加わり、中国の富裕層による日本の不動産漁(あさ)りが本格化している」(不動産アナリスト)という。不動産も中国マネーによるインバウンドバブルの様相を呈しているようだ。

(森岡英樹)

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