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2023年10月 8日号
社会 各地で「提供停止」のホーユー 物価高きつい給食業界の事情
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 全国の学校や寮に給食などを提供している食堂運営会社「ホーユー」(広島市中区)が供給する全国約150施設のうち、約半数への提供を停止していることが9月5日明らかになった。2学期から停止しているケースが相次いでおり、同社の山浦芳樹社長は取材に対し「給食を提供できなくなったのは申し訳ない」と謝罪、現在は破産手続きを進めているとした。

 ホーユーは元々は保温材開発・販売を目的に1994年に「邦雄商事」として設立されたが、開発段階で計画が頓挫し、役員を刷新して焼肉店経営へ業態変更。同時期に学校食堂等の営業権獲得に動き始め、97年7月広島修道大内で食堂運営を開始した。だが、慢性的な赤字が続き、2000年6月に山浦邦弘氏が社長に就任し、現在の「ホーユー」に商号変更して経営の立て直しを目指した。しかし、依然として採算は改善されず、06年9月に息子で現社長の山浦芳樹氏に経営を譲った経緯がある。以降は、大学、学生寮を中心に一般企業の食堂・レストラン・売店の経営及び給食受託を手掛け、中国地方を中心に四国、九州、関西、東海地区へ営業対象を広げた。15年11月期末時点で180拠点でサービスを行っていたが、16年11月期からは業績悪化に伴うリストラ策の一環として不採算店からの撤退を進めていた。

 ホーユー株の9割を所有する山浦芳樹氏は1993年に英国の大学を卒業後、親族が経営するビフロ(2003年6月銀行取引停止処分を受けて倒産)に入社。00年独立してイベント企画会社を創業。その後、業態を変更して個人企業として医療機関を対象とするコンサルタント業務を行っていたが、実父である山浦邦弘氏からの要請もあって04年個人企業を廃業し、ホーユー入り。実質的な経営権を掌握して事業の立て直しを図ってきた。

 しかし、「運転資金の大半を借り入れに依存する慢性的な資金繰り難で、財務は多額な債務超過に陥っていた。そこに円安などに伴う原材料費の高騰や人件費高が追い打ちをかけた格好だ。倒産は時間の問題だった」(大手信用情報機関)とされる。今年1月時点の借り入れは、長期が7億7000万円、短期が1億8000万円の計9億5000万円に及ぶ。

 学校給食は、自治体の入札を経て受託事業者が決まるケースが多く、自治体の財政状況を反映して元来、採算のよい事業とはいえない。特に年度の予算に縛られる自治体相手では、年度途中での原材料費の高騰など不測のコストアップには、受託者が身を削ってしのぐしか手立てがないのが実情だ。社長は「食材費、人件費、光熱費が上昇したが値上げできない。やればやるほどマイナスになる」「学校などに相談したが、価格転嫁できなかった」と苦しい台所事情を吐露している。

 一方、学校給食という社会性の高い事業だけに、期の途中で撤退することは社会的な批判を浴びかねないジレンマを抱える。ホーユーの破産手続きは、正にそうした苦しい学校給食事業を象徴している。

 静岡県など一部自治体では、ホーユーで働いていた調理師を直接雇用し、学校給食を再開した所も出てきているが、市販の弁当などで急場をしのぐ学校が少なくない。影響は深刻だ。

(森岡英樹)

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