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2023年8月13日号
金融 マクドナルドが「都心店」設定 飲食チェーン「統一価格」限界
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 日本マクドナルドは東京、愛知、大阪などの店舗について「都心店」と「準都心店」を設定し、7月19日から一部の商品を10〜90円値上げした。

 例えば「ビッグマック」の価格は通常の店では450円のところ、準都心店では470円、都心店では500円になった。特に都心部での値上げは、テナント料や人件費などの店舗の運営コストが上がっていることが理由だ。「人件費や原材料などコストの増加分をサービス価格などに転嫁する動きが広がっている。そんな中、比較的値上げを受け入れてもらえる消費者がいるマーケットはどこかというところで、都市から始まったということだろう」(アナリスト)とされる。

 だが、その線引きに消費者の混乱も見られる。東京都内でも新宿駅から延びる小田急線の沿線を見れば、新宿駅周辺は「都心店」、世田谷区にある下北沢店は「準都心店」、同区梅ケ丘駅前店は「通常店」と設定され、近くにある店舗でも値段が変わる。横浜駅では東口と西口の店舗で価格が異なるケースもあるという。

 また、関西では大阪と京都は「都心店」があるのに対し、神戸には「準都心店」だけ。これらの違いについて日本マクドナルドは「これまで、空港や遊園地、サービスエリアといった特殊な立地の店舗では、通常より高い値段の都心型価格を導入してきたが、今回その都心型価格の適用を全国約3000店舗の6%に当たる東京、愛知、大阪などの184店舗に拡大した。都市の規模ではなく、賃料・人件費等の負担が特に大きい店舗で価格を見直した」と説明する。その結果、同じ地域でも値段の異なる店が混在することになったわけだ。

 こうした斬新な値上げ・価格戦略を仕掛けたのは、2019年に社長に就いた日色(ひいろ)保氏だ。14年に中国の原材料調達先の品質管理問題で客離れが続き、赤字計上を余儀なくされた日本マクドナルドは、現会長のサラ・エル・カサノバ氏の社長就任後にV字回復を果たす。そのカサノバ氏の後を受けたのが日色氏だった。

 日色氏は1965年、愛知県生まれ、88年に静岡大人文学部を卒業し、ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人に入社。2012年には日本法人の社長に就任した。18年9月に日本マクドナルドに転じ、上席執行役員チーフ・サポート・オフィサー(CSO)、19年3月に社長兼最高経営責任者(CEO)に就いた。経済同友会の副代表幹事も務めている。

 今回の値上げは、マクドナルドをはじめ、大手飲食チェーンの「全国同一価格」のビジネスモデルが限界にきている証しではないかとの指摘もある。「店舗の賃料負担もアルバイトの実勢賃金も地域差が広がっているので、今度も同一価格を取りやめる企業が出てくるのではないでしょうか」(大手信用情報機関)

 マクドナルドの変化は、大手飲食チェーンの近未来を知らせる「カナリア」のようだ。

(森岡英樹)

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