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2023年8月 6日号
金融 投資ファンドの「株主提案」でツルハHD「創業家」が岐路に
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 ドラッグストアの〝優等生〟ツルハホールディングス(HD)が8月10日の株主総会に向け、「物言う株主(アクティビスト)」として知られる香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントに厳しい株主提案を突き付けられている。M&Aによる規模拡大で業界2位へのし上がってきたツルハHDだが、売上高1兆円を間近に、創業家は岐路に立たされている。

 オアシスは「(ツルハHDは)ガバナンス上の重大な欠陥があり、成長が妨げられている」とする詳細な資料を提示し、株主に自らの提案への賛成票を呼びかけている。提案では「創業三家のツルハHDの株式保有比率は10%未満であるにもかかわらず、監査等委員以外の取締役5人のうち4人を創業三家が占めており、その選任プロセスに疑問が残る」「創業家による各子会社への過度な支配体制は、シナジーの発現を妨げ、ガバナンスの低下を招いた」と指摘している。

 ツルハHDは2018年に愛知県地盤のビー・アンド・ディー、20年に九州地盤のドラッグイレブンなど中堅ドラッグストアの買収を繰り返しながら規模を拡大し、業界の「優等生」とも言われてきた。現在では傘下に、くすりの福太郎やレデイ薬局、杏林堂グループも入っている。

 会長には創業家3代目の鶴羽樹氏が、社長には樹氏の次男である鶴羽順氏が就いている。また、傘下のくすりの福太郎の小川久哉社長はM&Aなどを担当する取締役に、ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本の村上正一社長も取締役に就いている。社外取締役も創業家と親密な関係にある人物や、ツルハのルーツである北海道財界との「馴(な)れ合い人事」で選出された可能性があるとオアシスは指摘している。

 特に小川氏については、15年に発覚した薬剤服用歴の不適切管理の責任をとって社長を退任したものの、翌年には復帰したことは問題があるのではないかと指摘。小川氏とその親族は、自身らが保有する土地・建物を、くすりの福太郎に賃貸し、賃料収入を得ていることもガバナンス上、問題があると指摘されている。また、鶴羽樹会長の退任や北海道拓殖銀行出身の社外取締役の解任、会長職を廃止する定款の変更等を要求。自らが推薦する社外取締役5人の選任や、取締役会の議長を社外取締役から選出するよう求めている。

 ツルハHDにおける創業家の持ち株比率は高くない。22年5月時点で、鶴羽樹氏が2・9%、同弘子氏が2・0%、同暁子氏が1・9%、同肇氏が1・5%にすぎない。一方、オアシスのツルハHDにおける持ち株比率は12・8%。機関投資家などが賛成に回れば、オアシス陣営は3分の1を超え、13・5%を保有するイオンも賛同すれば過半数を超える。オアシスの提案が可決されれば、ツルハHDの同族経営は終焉(しゅうえん)を迎える可能性もある。

 オアシスの創業者兼最高投資責任者のセス・フィッシャー氏は「ドラッグストア業界には再編が必要です。再編は顧客、従業員、債権者、株主など、すべてのステークホルダーに利益をもたらすものです」とコメントしている。市場では、早くもイオン子会社で業界最大手のウエルシアHDとツルハHDが経営統合する可能性がささやかれ始めている。

(森岡英樹)

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