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2023年7月16日号
金融 経営破綻から13年ぶり黒字化 「不死鳥」シーガイアが復活へ
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 大型リゾート施設「シーガイア」を運営するフェニックスリゾート(宮崎市)が13年ぶりに黒字化した。効率化や高級路線への転換が功を奏し、文字通り「不死鳥」のように蘇(よみがえ)った。

 フ社の2023年3月期の単独決算は、経常利益が6800万円の黒字となった。片桐孝一社長は「セガサミーホールディングス(HD)の下での11年間、さまざまな取り組みを続けて事業再生を完了できた」と胸を張った。同月期の宿泊客数は前期比28%増、ゴルフ場利用客は同9%増と新型コロナウイルスの感染拡大からの回復が鮮明だった。売上高は32%増の109億円で、4期ぶりに100億円を超えた。

 来年3月期も2期連続の黒字を見込む。片桐社長は「会員が増え、リピーターとして利用客の基盤が広がった」として「稼働率などは堅めにみているが、黒字は継続できる」と強調した。

 シーガイアは1993年7月に宮崎県や宮崎市、民間企業などが設立した第三セクターが開業した。総合保養地域整備法(リゾート法)指定第1号で、総事業費2000億円を初期投資した大型施設として話題を集めた。世界最大級の室内プール「オーシャンドーム」は目玉施設だった。2000年7月には、九州・沖縄サミットの外相会合も開かれたが、巨額な建設費用に加え、バブル崩壊で入場者数が目標を大幅に下回るなど業績は低迷。01年2月に会社更生法の適用を申請し、倒産した。

 その後、経営を引き継いだ米投資会社リップルウッド・ホールディングス(後のRHJインターナショナル)がリストラを続け、10年3月期の単独決算で開業後初の経常黒字を達成した。しかし、翌11年3月期から再び赤字に転落し、12年にセガサミーHDの子会社となり、事業再生に取り組んできた。

 復活で金融関係者の脳裏をよぎるのは、1997年6月に67歳で自殺した宮崎邦次・第一勧業銀行(現みずほ銀行)元頭取の面影だろう。宮崎氏はシーガイアに巨額の資金を融資し、開業に導いた「生みの親」のような存在だからだ。

 筆者も宮崎氏とは取材を通じて親交があった。逆さまつ毛で、いつも泣いたような目をしていたが、人間性も姿そのまま情の深い人だった。映画が大好きで、会うと名画の話に花が咲いた。秘書経験が長かったこともあり、すぐに手帳を取り出し、メモする癖があったことを覚えている。顧客と応対する時は、けっして足を組まなかった。

 その宮崎氏は佐賀県出身で、九州大法学部卒ということもあり、頭取時代から宮崎県のシーガイア建設に積極的に関与した。「宮崎県は公営ギャンブルがなく、リゾートにはうってつけ」というのが宮崎氏の口上だった。しかし、裏ではシーガイア融資に関して口利き利権が暗躍していたことが後になって判明する。「最後の黒幕」と言われたフィクサー、西山広喜氏などの働き掛けから巨額な融資が引き出されていた。

 そうしたアンダーグラウンド人脈との関係は、97年に第一勧銀が総会屋に巨額な不正融資を行っていたことが判明し、社会的非難の的となっていく。そして、次期頭取に内定していた副頭取の藤田一郎氏ら役員経験者が逮捕。相談役に退いていた宮崎氏も連日、東京地検に呼ばれ事情聴取される最中、自ら命を絶った。あれから四半世紀、宮崎氏が心血を注いだシーガイアは蘇りつつある。

(森岡英樹)

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