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2023年6月11日号
金融 東京ディズニー40年と「銀行」 最大のリスクは「地震だった」
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 千葉県浦安市の東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)を運営するオリエンタルランド(OLC)は5月19日、加賀見俊夫会長兼最高経営責任者(CEO、87歳)が退任すると発表した。後任には高野由美子副社長(66)が昇格する。OLCの会長兼CEOに女性が就くのは初。加賀見氏は引き続き代表権を持ち、取締役会議長を務める。吉田謙次社長(62)は留任する。

 加賀見氏は開業に尽力した東京ディズニーの「生みの親」。その退任は、正にTDLが開園40周年を迎えたタイミングとなった。

 TDLが米国外としては初めてのディズニーランドとしてオープンしたのは1983年4月15日。節目の今年4月15日には雨が降る中、午前8時15分の開園から家族連れらでにぎわった。記念セレモニーでは吉田社長が「皆さまの夢がつながり続ける場所であり続けられるよう、努力してまいります」とあいさつ。ミッキーマウスたちが40周年のテーマソングに合わせて躍動感あふれるダンスパフォーマンスを披露した。

 OLCは2001年にオープンしたTDSと合わせると、これまでの入園者数は延べ8億人を超えているという。日本での本格的なテーマパークの草分けだが、その開園までは本当にうまくいくのか見当もつかないスタートだった。支えたのは日本長期信用銀行。1998年に経営破綻し、一時国有化された銀行だ。

「TDLへの融資は、それまでの不動産を担保にした融資ではなく、TDLの運営会社であるOLCが、米国のディズニー本社に毎年返済するロイヤルティーを担保にした、日本初のロイヤルティーファイナンスだった。融資の期間は最長20年と長く、果たしてTDLが20年にわたりうまくいくのか疑心暗鬼だった」(日本長期信用銀行OB)という。また、融資期間が長く、その間の各種リスクも勘案されたという。

「最大のリスクは大地震で建物が崩壊する可能性があるのではないかということだった。結果的に融資期間終了まで大地震はなかったが、融資した当行そのものが破綻の憂き目にあった」(同)と振り返る。

 その後、2011年3月に東日本大震災が起こり、TDLもTDSも被害を受けるが、地盤固めや耐震対策が講じられていたこともあり、建物が倒壊することはなかった。ちなみに地盤固めについては、「サンド・コンパクション・パイル工法」という技術が使われている。強固に締め固めた砂杭を地中に造成して地盤を改良する方式だ。

 開園から40年、数々の変遷があった。直近のコロナ禍はまさに最大の試練となった。行動制限で入園者数が激減し、収益難に喘(あえ)いだ。だがその苦境も乗り越え、再飛躍を遂げた。OLCが4月27日に発表した23年3月期の連結決算は、最終(当期)利益が前期比10倍の807億円となった。行動制限の緩和を受け入園者数が回復し、客単価も上昇した。24年3月期の最終利益は開業40周年の関連イベントなどにより、前期比8%増の869億円を見込んでいる。ミッキーマウスの抜群の「スマイル」が目に浮かぶ。

(森岡英樹)

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