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2023年6月11日号
社会 50歳以上限定の「達人戦」創設 藤井六冠の「出場」まで継続を
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 藤井聡太六冠(20)の「最年少名人」の行方が注目される中、日本将棋連盟は5月19日、50歳以上の棋士を対象としたシニア棋戦「達人戦立川立飛杯」を創設したと発表した。

 第1回の参加資格者は今年4月1日現在で満50歳以上の現役棋士全員。予選トーナメントで4人を選び、永世称号を持つ谷川浩司十七世名人(61)と、永世称号資格を持つ▽森内俊之九段(52)=十八世名人資格▽羽生善治九段(52)=十九世名人を含め永世七冠資格▽佐藤康光九段(53)=永世棋聖資格――のシード4人を合わせた計8人で本戦トーナメントを争う。

 持ち時間はチェスクロック計測で、予選が各1時間(切れたら1分)、本戦が30分(切れたら30秒)。チェスクロック計測は1分未満の秒数も消費時間に加算する進行が速い形式で、いわば「早指し選手権」だ。

 予選は将棋会館(東京都渋谷区)と関西将棋会館(大阪市福島区)で実施、本戦は11月24、25日に東京都立川市の「立川ステージガーデン」でファンを会場に迎える公開対局を行う。第1回は6月から予選が始まり、54人が参加する。

 主催は連盟で、特別協賛は立川市が本社の不動産会社「立飛ホールディングス(HD)」。王将戦には近年、同社が協賛し、立川市内にあり、同社が親会社の「SORANO HOTEL(ソラノホテル)」が会場になってきた。

 協賛は東京都福生市が本社の「トヨタS&D西東京」。優勝賞金は非公開だが、連盟会長でもある佐藤九段は記者会見で「トヨタS&D西東京様が販売している車が基本的には買えると思います」。また、自らも出場するとあり「近年、平均寿命が延びている。年長者も元気なところを見せたい」「50歳以上で現在も活躍している棋士は多く、強烈な個性を持っている。ベテラン棋士の魅力を伝える棋戦になれば」などと抱負を語った。

 将棋界は今、藤井六冠が破竹の勢いだ。5月22日には名人戦七番勝負で対戦成績を3勝1敗とし、史上最年少名人に加え、羽生九段に続く史上2人目の7冠に王手をかけている。一方、その藤井六冠には「同世代のライバルがいない」と言われる。タイトル保持者の最年長は、39歳の渡辺明名人だ。〝若手〟という点では藤井六冠の文字通りの独壇場だ。

 対して、通算タイトル獲得数が歴代最多99期の「レジェンド」羽生九段をはじめ、達人戦に出場する〝若手〟たちは「羽生世代」と言われてきた。佐藤、森内の両九段に加え、丸山忠久九段(52)も名人経験者だ。郷田真隆九段(52)はタイトル通算6期、深浦康市(51)と藤井猛(52)の両九段も同3期を誇り、今なお第一線の強豪たちは若手時代から、長くしのぎを削ってきた世代でもある。

「50歳以上限定」の大会といえば、プロゴルフのシニアツアーが有名だ。バブル景気真っただ中だった1988年に創設され、名ゴルファーがオールドファンを楽しませ、今なお続く。達人戦実現は将棋界の「藤井聡太バブル」の産物かもしれない。藤井六冠が参加できる頃には立ち消えていたということがないよう「オジサンたちの戦い」(女性棋士は不在のため)も長く続いてほしい。

(粟野仁雄)

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