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2023年5月21日号
社会 芦屋で誕生の史上最年少市長 初当選を支えた「灘OB」人脈
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 4月23日に投開票が行われた統一地方選後半戦の兵庫県芦屋市長選で史上最年少市長が誕生した。高島崚輔(りょうすけ)氏、26歳。それまでの最年少記録は1994年に27歳で東京都武蔵村山市長選に当選し、2期を務めた志々田浩太郎氏だった。

 現職で再選を目指した伊藤舞氏(53)らにも大差をつけて初当選した高島氏。24日の当選証書付与式で「身の引き締まる思い。大きな期待を寄せていただいた。4年間でしっかり形にし、結果で恩返ししたい」と決意を述べたが、その学歴がすごい。

 97年2月に大阪府箕面市に生まれた。灘中学・高校(神戸市)に通い、東大に次いで米ハーバード大に合格。一旦東大に入学したが中退してハーバード大に進む。同大で環境工学を専攻して昨年卒業する一方、在学中には留学支援のNPO法人「留学フェローシップ」の理事長に就任した。そのトップとして文部科学省、江副記念リクルート財団などと協働して海外留学や進路開拓を支援。17年からは外務省・経済産業省の、19年には芦屋市役所でのインターンシップで芦屋市との関係を深めた。

 灘高時代は「学校の試験の前には友達に自分のノートをよく貸していました」。人望も厚く生徒会長も務めた。政治に関心を持ったのは高校1年生の時とか。「(当時の)箕面市の30代の市長に会い、長く話を聞いて、カッコいい仕事と思いました」(高島氏)

 JR芦屋駅北口での街頭演説をのぞくと、有権者のことを「みなさま」ではなく「あなた」と呼び、年配や高齢の市民のことを「先輩」と言う。そして「高島崚輔」の後に必ず「26歳です」を付け加えていた。

 応援に来ていた大阪府四條畷市の東修平市長(34)は「私も28歳で当選しましたが、若さを強調した方がいいとか、アドバイスしていました」と話す。関西財界ではロート製薬の山田邦雄会長が支援を明言。陣営関係者は「実は、江崎グリコの江崎勝久会長も応援しています」と声を潜める。2人とも灘OBだ。

 少人数の対話集会を繰り返し、SNSで発信してきた。投開票日前日に南芦屋浜での対話集会では、「(JR芦屋駅南地区の再開発事業で)200億円もかけて11階建てのマンションを2棟建てるだけ。これでは普通の街にしかならない。もっと芦屋らしい街にしなければ。まだ市は契約を結んでいないから間に合う」と主張。また「この6年で30代、40代の人は5000人も減っています。この世代の介護関係者も大阪などに出てしまうのは、待遇が悪いからなんです」などと訴え、参加者の意見にも耳を傾けていた。

 芦屋市は関西で成功した企業の社長や医師、弁護士らの高額所得者らが居を構える大阪―神戸間で随一の高級住宅街で知られた。しかし、阪神間の主要都市で最も早く高齢化が進む。

 市長選の選挙期間中、筆者が高島氏に「政治家になりたいのなら、普通は市議から始めるのでは?」と問うたことがあった。すると高島氏は「市議と市長は仕事が全く違います。市議は市長になるステップではありません」。持論を明確に述べた。

 政治家としての実績もなく当選した大きな要因は、各界で活躍する灘の大物OBらのバックアップも大きかったろう。真価が問われるのはこれからだ。

(粟野仁雄)

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