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2023年3月 5日号
社会 宝塚市役所が43年続けていた英国式「G階」表示を廃止した
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 兵庫県宝塚市は2月13日、市役所本庁舎で使ってきた地上順からG階(グラウンドフロア)、1階、2階――とした階数表示を廃止した。これは「G階」などは英国式の階数の表示や数え方であり、日本の大半の建物で採用されている表示なら「英国=日本」の順で「G階=1階」「1階=2階」「2階=3階」......という具合になる。43年間も続いてきたが、以前から住民らから「分かりにくい」と苦情が多かった。

 今回は本庁舎とつながる上下水道局庁舎が耐震性の問題などで解体され、ほかの機能も備えた第2庁舎として改築されたのを機に改めた。市管財課は「長年の伝統でしたがやはり市民にとって分かりやすいことを重視した」としている。

 本庁舎は地上6階、地下1階で1980年の建設。宝塚市在住で文化勲章も受けた名建築家の村野藤吾氏(1891〜1984年)が設計し、英国式の呼称を建設時に採用した名残だった。市は村野氏の遺族から変更の了承を得ているという。

 欧州では英国のほか、フランスが日本でいう建物の1階をレ・ドゥ・ショセ(車道の高さの意味)とし、「1階」は日本の2階に当たる。しかし、日本は米国のように建物の1階部分を、そのまま1階とする表示や数え方が一般だ。

 そのため本庁舎は、来庁者が「どこが1階なんや」と職員に問い合わせることが多かった。また、上下水道局庁舎は英国式を使わず、建物1階を1階としていたため、2階の渡り廊下を歩いてきても本庁舎の表示が「1階」となるなど混乱をしやすかった。

 武庫川の西に建設された本庁舎は東側の標高が低く西側が高い。低い東の駐車場側から入ると本庁舎は「G階」、高い西側にある最寄り駅の阪急逆瀬川駅から歩いてきた人が入ると「1階」となっていた。なお「村野氏がなぜ『G階』という呼称にしたのかは、明確な資料がなくて分からない」(市管財課)とのことだ。

 昨年12月に完成した2階建ての第2庁舎は2月13日から業務が開始され、これに合わせて市は、本庁舎のG階を1階、1階は2階、2階は3階......と各フロアの呼称や表示を変更し、エレベーターのボタン表記も変えた。第2庁舎も本庁舎と渡り廊下でつないだが、階数の表示の差はなくなった。

「駐車場から来る人と、逆瀬川駅から来る人が同じ階で呼称が違ったので混乱が多く、この機に変えました」(同)。問い合わせは減りそうだ。

 地形的に一つのビルで階が混乱しやすいこともある。神戸市のJR六甲道(ろっこうみち)駅の北にある商業ビルも、南から北へと上る坂の途中にある。低い駅側のエスカレーターで1フロア上がった所が1階だ。だが、建物内には「ここは一階です」などの表示が各所にある。このように分かりやすい表示を多く設置していれば、異国情緒というか、どこか趣が漂う独特の呼称をなくさなくてもよかった気もする。それとも、宝塚市職員は40年以上にわたって説明し続け、疲れてしまったのだろうか。

(粟野仁雄)

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