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2023年1月17日号
金融 「23年は円高デフレ逆戻り」? 〝ニアピン〟ニトリ会長の予測
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「日本は来年(2023年)春にも日銀総裁の交代が見込まれ、マイナス金利政策を修正して金利を上げる方向転換が起こるかもしれない。(円安・インフレが続いた今年から)潮目が変わるだろう。来年中には1㌦=120円と円高に転じ、110円台もありうる」

 ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は22年末、『日本経済新聞』のインタビューにこう指摘した。また、一時2倍に跳ね上がった物流費や原材料費についても、「来年(23年)には、原材料も値上がりから値下がりへと変わるだろう。(物流費や原材料費の下落などを受けて)あらゆるモノの価格も下がっていく。その意味で、来年は『元に戻る年』になるとみている」と強調した。

 株価予想で毎年のように「ニアピン賞」を獲得している似鳥氏らしい、日本経済を俯瞰(ふかん)した手堅い見立てだ。「似鳥氏の為替や株価予想は驚くほどよく当たります。証券界では『似鳥指数』(マーケットの動向を表す指数)を作ったら売れるだろうと、もてはやされているほどです」(大手証券幹部)という。

 似鳥氏は「私は世界経済の動向やIMF(国際通貨基金)の指標も見ながら、日本と米国を行ったり来たりして、現場に足を運んでいます。部下に行かせるのではなく、トップ自らが行かなければいけません。現場で実際に調査して、現実を知ることで初めてわかることがあるのです」という。似鳥氏が景気の先行きを見極める際に最も重視するのは「米国経済」の動向であり、その米国に自ら出向き、現地で調査・視察しているわけだ。

 為替変動についてもほぼ毎年的中させてきた。だが、22年は10月以降は円高傾向になると見て9月分まで1㌦=114円90銭で為替予約していたが、予想が見事に外れた。「商品の9割を海外で生産するニトリは、1円の円安で年20億円の減益要因になる」(アナリスト)だけに深刻だ。

 22年12月23日に発表した22年3〜11月期連結決算では、営業利益が前年同期比12%減の950億円、経常利益が12%減の975億円、純利益が12%減の665億円にとどまった。「ニトリは今期から決算期を2月20日から3月31日に変更し、23年3月期は13カ月11日の変則決算となる。計上増益を果たせば通期で36期連続となるが、黄信号が灯(とも)っている」(同)とされる。

 ニトリのビジネスモデルは、自主企画した商品を人件費の安い中国などで製造し、低価格で販売するSPA(製造小売業)で、デフレ・円高で利益が極大化するビジネスモデルだ。昨年のインフレ・円安はまさにアゲンストの経営環境だったわけだ。似鳥氏は、その環境が日銀の総裁交代を契機に転換すると読み、「元に戻る年」と位置付けているわけだが......。

 特に「ニトリは海外への出店を強化しており、中国大陸や台湾、マレーシアなどアジアを中心に年100店舗ペースで出店し、25年3月期には海外出店数が国内を上回る計画を打ち出している。経済予測は一層重要性を増す」(市場関係者)とされる。

「不況の時こそチャンス」と語り、「逆張り経営」で成功し続ける似鳥氏の予測は23年は的を射るだろうか。

(森岡英樹)

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