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2022年12月18日号
社会 就活テストで「替え玉」が逮捕 コロナで「オンライン」も影響
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 就職活動中の女子大生から依頼され、企業の採用試験のウェブサイトで替え玉受験した男が逮捕された。ウェブテスト代行の摘発は全国初だという。

 11月21日に警視庁サイバー犯罪対策課に逮捕されたのは、大阪市北区の関西電力社員の男(28)。今年4月、大手クレジットカード会社が新卒社員採用で行ったウェブテストで、代行を依頼した東京都の女子大生(22)に成り代わって受験した疑い。逮捕容疑は私電磁的記録不正作出・同供用だった。

 依頼した女子大生も書類送検され、この女子大生は1科目につき2000円の報酬を払っていた。これまで23社の替え玉受験を依頼して計10万円を支払った。警察の調べには「ウェブテストを突破できず、不採用が続き、ツイッターで検索して見つけて依頼した」と供述しているという。

 男はツイッターで「京都大大学院卒」「通過率95%」などと信用させ、「ウェブテスト代行します」などと「客」となる就活学生を募集していた。今年1〜7月の間、ウェブテストの替え玉受験を約300人の就活学生から1科目2000円で請け負い、計400万円の収入があったとみられる。男は「約4年前から4000件以上を請け負った」としており、同課は裏付けを急いでいる。

「京都大大学院卒」という高学歴はウソではなく、男は容疑を認めて反省しているという。「はじめは小遣い目的だったが、学生から感謝されたり、就職の相談をされたりするようになり、非常にやりがいを持っていた」などと供述しているという。関西電力は「当社社員が逮捕されたことは大変遺憾であり重く受けとめている。今後、事実関係を確認の上で厳正に対処する」とコメントを出した。

 就職試験ではないが、替え玉受験といえば筆者も受験生だった1975年、娘に成り代わった高校教員の父親が女装して名門女子大を受験した珍事を思い出す。当時、男性にも流行(はや)ったパンタロン姿で、喉仏はタートルネックで隠したが、隣の女子受験生が2日目になって不審に思い、「男ではないか」と通報して発覚した。

 企業の採用試験は高校やや大学の入試と違い、厳格に公平なものではないだろう。コネや採用側の「好み」で決められる要素も、事の是非はともかく今も昔もあるのではなかろうか。

 ただ、昔のように会社に足を運んでしか受験できないのなら数社しか受けられなかったが、最近はスマートフォンなども通じたオンラインでのエントリーが普通になった。さらに、大勢の人が集まり、「対面」が敬遠されたコロナ禍もあり、ウェブテストを導入する企業が増えていた。企業側にしても、効率的に応募を処理できるウェブの活用は進んでいた。

 そんな中、数多くウェブテストを受けても、一つも通らないとなれば、就活学生は焦るだろう。依頼者に感謝もされたとはいえ、犯罪は犯罪だ。企業側も不正防止対策が課題となってくる。

(粟野仁雄)

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