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2022年12月11日号
金融 「ジェラートピケ」米社傘下に ベイン支援で管理部門強化か
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 女性に人気のもこもこ室内着〝ジェラートピケ〟を販売するマッシュホールディングス(東京)は11月16日、米投資ファンドのべインキャピタルに株式の過半を譲渡すると発表した。譲渡額は2000億円規模になると見られ、アパレル買収では過去最高額になる見込みだ。創業者で現社長の近藤広幸氏は、膨大な創業者利益を得ることになる。

 マッシュは近藤氏と、CD―ROMの大手流通販売・ハイパークラフトで同僚であった畠山広文氏によって1998年に創業されたCG制作会社「スタジオ・マッシュ」が前身で、2005年にファッション事業に参入し、ジェラートピケなどのブランドを販売した。10年からはコスメキッチンなどのビューティー事業に、13年には飲食業に、19年には不動産業にそれぞれ参入するなど、ライフスタイル全般に事業領域を広げている非上場会社だ。「自社のフード事業部がメニュー開発を担当する社員食堂やヨガスタジオ、フィットネスジムなどが併設された東京・麹町ダイビル内の本社は有名」(メガバンクのアパレル担当者)という。

 事業領域の拡大に伴い12年に持株会社「マッシュHD」に移行し、グループ企業は国内11社、海外10社に上る。グループ全体で9割以上が女性社員で占められている。資金調達は、「15年に財務担当役員による2億円の横領が発覚したことを受け、16年8月期以降は金融機関や取引先に対し、返済計画や事業の説明を行っている」(大手信用情報機関)とされる。21年12月にはみずほ銀行と「サステナビリティ・リンク・ローン」による融資契約(期間3年)を締結し、総額3億円を調達している。

 マッシュHDの株式の100%を保有する近藤氏は1975年、茨木県牛久市出身で、バンタンデザイン研究所空間デザイン学科を卒業後、建築デザイナーやCGアニメーションディレクターなどを経てマッシュを設立。2022年8月期の売上高は1023億円と初めて1000億円の大台を突破した。営業利益は98億円だ。だが、国内と海外の売上高の比率は9対1で、これを1対1とするのが目標で、3〜5年後の上場を目指している。上場後の売上は国内1500億円、海外1500億円の計3000億円を目標としている。

 今回の株式譲渡はその上場の布石で、「21年末から複数のファンドと話をしたが、海外事業を伸ばすために海外のファッション事業に投資実績のあるベインを選んだ」(近藤氏)という。買収スキームは、近藤氏が特別目的会社(SPC)に保有株の全てを売却し、その後再出資する形で4割程度の大株主となり、引き続き経営に当たる。

 この買収についてメガバンクの幹部は「マッシュは業容が急拡大したことに伴い管理部門の充実が欠かせない。ベインは海外に投資するアパレルとの連携に協力することはもちろんだが、管理部門をサポートする意図があるのだろう」とみる。15年の担当役員による横領のような不祥事は上場の致命傷となるだけに、その轍(てつ)は踏みたくないところだ。

(森岡英樹)

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