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2022年12月 4日号
社会 南海なんば駅前も通行止めに 大阪市で相次ぐ「ホコテン化」
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「ホコテン」こと、日本の恒久的な歩行者天国の先駆けは1972年の北海道旭川市だという。半世紀を経た現在、どこよりも力を入れるのが大阪市だ。

「ミナミ」と呼ばれる繁華街にある南海電鉄なんば駅の「駅前広場」では、車が通行していた場を恒常的な歩行者天国にするため、11月8日から車両が全面通行止めになった。駅前広場から日本橋方向へ伸びる「なんさん通り」も、深夜に荷物の積み下ろしをする許可車両などを除いて通行止めとなった。

 平日だったが、11月中旬に行ってみた。車道を堂々と歩けるのは気持ちがいい。親子連れも安全に歩けるから、来る人は増えるだろうと感じた。

 歩いていた年配女性は「この辺は車だらけで危なくてさっさと通り過ぎるだけでした。歩行者天国とはうれしい」と話した。また、近くの千日前道具屋筋商店街にある「川西厨房」の川西剛友代表(52)は、南海なんば駅と直結する「高島屋さんの物品搬入口がなかったら、もっと完璧な歩行者天国になるけど、あれだけはしゃあないかな。歩く人が増えればお客さんも増えるのでは。町会はすごい盛り上がっていますよ」と期待する。

 実際、米ニューヨークでは車を排除した方が、レストランなどの売り上げも伸びるというデータがあるという。国内の調査でも、買い物目的で短時間訪れる人より、無目的でも長く滞在する人の方が、消費は多いという結果もある。

 市内では中心部の梅田(北区)と難波(中央区)を南北に結ぶメインストリート・御堂筋でも「ホコテン化」が始まり、市は「浪速のシャンゼリゼ通り」を目指している。御堂筋は長さは約4㌔で南向き一方通行の6車線だが、既に南側の長堀通〜道頓堀川の区間で車用の側道の東西各1車線を車両通行止めにした。市は2025年の完成を目指し、御堂筋の側道の歩行者空間化に取り組んでおり、大丸心斎橋店の前あたりの側道は歩道に変える工事が始まっており、バス停も移動させている。

 前述の「駅前広場」もタクシー乗り場は既に別の場所に移された。いわば御堂筋の南の終点とも言える広場だが、ロータリーに通じる場所には英語や韓国語で移動を知らせる看板も立つ。タクシー運転手からは「客が拾いにくくなる」との心配も聞かれる。しかし、大阪市建設局の小松靖朋道路空間再編担当課長は「歩行者が歩きやすい空間に変えていきたい。協力をお願いしたい」と話す。

「駅前広場」は舗装や照明灯の整備後にベンチなどが置かれ、23年秋から歩行者天国として楽しめる。小松課長は「食事、イベント、憩いを楽しめる空間を増やして、素晴らしいポテンシャルを持つミナミをもっともっと魅力ある場にしていきたい」。

 車が何台通ろうが、ドライブスルーでもない限り、おカネは地域になかなか落ちない。むしろ歩く人が増えることこそ、真の活気や消費拡大につながるのではなかろうか。「ホコテン化」は浪速から日本社会への大きな挑戦だ。

(粟野仁雄)

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