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2022年10月16日号
社会 「日本電産への課税は違法だ」 京都府向日市の市民らが提訴
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 7月に竣工(しゅんこう)した日本電産の新社屋が建つ京都府向日(むこう)市の用地について、市民らが9月21日、「市が『田畑』と評価して固定資産税を徴収したのは違法」と安田守市長を提訴した。

 問題の土地は同社の本社(京都市南区)に隣接する約6万平方㍍の用地の一部。小型モータ事業本部などが入居する「ニデックパークC棟」が7月竣工し、今後、第二本社ビルなどを建設する予定。

 訴状によれば、日本電産が2020年に買収する前、この用地の大半は農地だった。買収後、向日市は地目を「更地」に変えた。前述の通り、今年7月にはC棟が竣工している。しかし、市は課税の際、税率が低い「田畑」と評価したままだという。原告は市の決定は〈使用実態に即したものといえず、不均衡、不合理な状態〉(訴状)と主張、京都地裁に違法性の確認を求めている。

 市は「法令に基づいて適正に課税している」(税務課)とコメントした。

 原告の一人、水島雅弘さん(78)は9月21日の記者会見で「公平で不透明さのない判決を求めたい」などと述べた。原告の杉谷伸夫市議(67)は筆者の取材にこう話した。

「向日市は税金を使って、用地を斜めに横切っていた川を付け替えるなどしました。市に損害賠償を求めると、裁判所が却下する恐れがあると考え、違法性の確認訴訟としました」

 原告らは6月、日本電産が取得した土地について、固定資産税台帳の評価額を是正するよう市に求める住民監査請求をした。しかし、市の監査委員会は「周囲の道路などライフラインの整備が完了したタイミングで課税を始めるのが妥当」などとして棄却していた。

 日本電産は現会長の永守重信氏が1973年、小さなプレハブ小屋で社員3人とともに創業した。22年3月期の本業のもうけを示す連結営業利益は1714億円に上る大企業になった。向日市出身の永守氏は18年、「永守重信市民会館」を建設して同市に寄贈すると発表。60代の男性市民は「市長は永守氏の貢献に報いようとして、特別扱いしたのではないかと疑いたくなる」と話した。

 日本電産の計画は人口5万7000人ほどの向日市にとって異例の巨大開発だ。C棟は威容を誇り、第二本社ビルなどが建つ予定の広大な土地はフェンスで囲われていた。現地の様子を見に来た京都市伏見区の男性は、用地から東海道新幹線を挟んだ所に建つ日本電産本社ビルの屋上を見上げながらこう話した。

「日本電産はこの辺りの中小メーカーを次々買収して大きくなったんや。会長はあそこのヘリポートからあちこち出張に行くんですわ」

 言うまでもないことだが、自治体が高額納税者におもねって税金をまけるようなことがあってはならない。

(粟野仁雄)

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