みずほ銀行が日本銀行に預けている当座預金に対し、日銀が「マイナス金利」を初めて適用したことが分かった。日銀が8月16日に公表した「業態別の日銀当座預金残高(7月)」によると、都市銀行の「マイナス金利適用残高」は5、6月にそれぞれゼロだったが、7月は9030億円。報道各社は「ほぼ全額がみずほ銀行」と一斉に報じた。
準備預金法は金融機関に一定金額を日銀の当座預金に預けるよう義務づけている。2016年から、日銀がその一部にマイナス0・1%の金利を適用し得る制度が始まった。適用を受けた金融機関は預金額が目減りしてしまう。
当然ながら金融機関はそれを避けようとして、日銀当座預金に預ける金額を抑え、資金を資本市場で運用してきた。しかし、日銀が金利を抑制する中、運用は難しくなった。みずほが今回マイナス金利の適用を覚悟して当座預金に資金を積み増したゆえんだ。
マイナス金利の適用によって、みずほの負担は「7000万円程度」(『日本経済新聞』)とも「7500万円に上る」(『朝日新聞』)とも報じられた。大手行にとっては微々たる金額だ。それにもかかわらず、みずほがマイナス金利の適用を選んだのはなぜか。
ある市場関係者は「日銀の次期総裁人事への無言の圧力ではないか」と見る。
実は三菱UFJ銀行も1月、マイナス金利の適用を受けていた。それから7カ月たつが、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁がマイナス金利政策をやめる兆しはない。黒田氏の任期は来年4月までだ。前出の市場関係者が言う。
「次期総裁の最有力候補は財務省と良好な関係にある雨宮正佳副総裁。指名権限がある岸田文雄首相は同省と気脈を通じています。メガバンクがあえてマイナス金利の適用を選択するのは、〝雨宮総裁〟を早く実現してほしいというシグナルにほかならないのです」
(森岡英樹)