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2022年7月31日号
金融 旧カルソニックカンセイ再建 事業再生ADRの失敗後は...
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 自動車部品大手のマレリホールディングス(さいたま市)は7月7日、民事再生法に基づく「簡易再生」の手続きを始めた。帝国データバンクの6月24日付「倒産速報記事」によると、マレリの負債額は2020年12月期時点で約1兆1856億円に上り、〈製造業では過去最大〉という。

 同社の前身は日産自動車系の部品大手、カルソニックカンセイ。17年、米投資ファンドKKRの傘下会社に買収された後、上場廃止になっていた。18年にはイタリアの自動車部品大手マニエッティ・マレリを買収、20年に現社名に変更した。

 前出の帝国データバンク記事によると、日産の低迷や新型コロナウイルスの影響を受けて業績が悪化したという。今年3月には私的整理の一種である「事業再生ADR(裁判外紛争解決)」の手続きを始め、5月に開いた債権者会議で事業再生計画案を示した。しかし、金融機関関係者によれば、「債権者が放棄を迫られる債権の割合に関し、債権者の一部が合意しなかった」。ADRが成立するには全債権者の合意が必要だ。

 実はこの要件について、岸田文雄首相を座長とする「新しい資本主義実現会議」が昨年11月に公表した「緊急提言」にこんな記述がある。

〈現在の法制度では、全ての貸し手の同意がなければ、債務の軽減措置が決定できない。このため、事業再構築のための私的整理円滑化のための法制整備の検討を進め、関連法案を国会に提出する〉

 新たな制度案には「債権者の多数が事業再生計画案に賛成すれば私的整理が成立する」という内容があり得るという。ただ、メガバンクの幹部は「事業再生計画案に反対した債権者が計画に協力しない場合はどうするのか」と現実性に疑問を呈する。いつの時代も債権者間の調整は容易ではない。

(森岡英樹)

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