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2022年7月 3日号
金融 骨太の方針から消えた目標年 財政再建路線は後退したのか
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〈財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む〉

 政府が6月7日、閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)にある文言だ。

「これまでの財政健全化目標」とは何か。昨年版をひもとくと〈2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化と、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す財政健全化目標〉と載っていた(PBは基礎的財政収支、GDPは国内総生産)。要は今年版には目標年次を記載しなかったのだ。

 メガバンクの幹部が言う。

「政府は『目標を変えていない』と説明していますが、財政再建路線が後退した感は否めません。円安が急激に進んでいる中、物価もはね上がり、日銀が金融緩和政策を転換する可能性が高まっていると考えるべき状況です。7月の参院選後、日銀がどう動くのか気掛かりです」

 日本銀行は政府が発行する国債を市場で大量に購入することで、金利を低く抑え込んでいる。日銀の資金循環統計によれば、昨年末現在の国債残高は1220兆円。そのうち日銀が保有する割合は43%に上る。市場参加者の間では「日銀が国債全体の半分近くを引き受けているのは異常。いつまでも持続できず、日銀は見直さざるを得ないのではないか」という不安が根強い。

 格付け大手の米S&Pグローバルによる日本国債の格付けは「A+」だ。最上位から5番目に高い格付けで、日本より低い先進国はスペイン(A)▽イタリア(BBB)▽ギリシャ(BB+)など少ない。日本がこのまま大規模な財政出動を続ければ、格付けがさらに低下する恐れもある。

 骨太の方針が閣議決定された翌日、財務省は新たに有識者会議「国の債務管理に関する研究会」を設けると発表した。13日の初会合で議論したテーマは「国債発行を取り巻く現状と課題」だ。どんな処方箋を描くのだろうか。

(森岡英樹)

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