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2022年6月19日号
金融 国際協力銀行の次期総裁人事 財務省が失地を奪還するわけ
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 国際協力銀行(JBIC)の次期総裁が林信光副総裁(65)に決まった。林氏は1980年、東京大法学部を卒業し、大蔵省に入省。財務省理財局長、国税庁長官などを歴任した。2016年にJBIC専務に転じ、18年から副総裁を務めている。

「財務省の失地奪還ですね」

 あるメガバンクの幹部は今回の人事をそう評す。JBICの前身行は、政府が1950年、全額出資して設立した日本輸出銀行(52年、日本輸出入銀行に改称)。設立の経緯から、大蔵官僚出身者が総裁に就くことが多かった。

 その後、他機関との合併などを経て、小泉純一郎首相が推し進めた政策金融改革の一環として、2012年に今のJBICが発足した。初代総裁に就いたのは元トヨタ自動車会長の奥田碩(ひろし)氏。第2代総裁の渡辺博史氏は大蔵・財務省出身だったが、第3代の近藤章氏は住友銀行出身、第4代の前田匡史(ただし)現総裁は輸銀生え抜きだ。「後任にも生え抜きを登用するのでは」という見方があったが、ふたを開ければ財務省OBだった。

 なぜか。前出のメガバンク幹部は「前田さんがかつて『サハリン2』に力を入れたことと関係がある」という見方をする。サハリン2はロシア・サハリン島(樺太)沖合の石油・天然ガス開発事業のことで、三井物産と三菱商事が出資する。

「前田さんは『サハリン2のプロジェクト・ファイナンス(事業収入を返済原資とする融資)はおれがまとめた』とたびたび話し、日本の権益確保を後押しした張本人なのです」(前出の幹部)

 ロシアがウクライナに侵攻した後、英石油大手のシェルはサハリン2から撤退を決め、日本企業が引き続き事業に関与できるのか予断を許さない。

 サハリン2という前田氏の手柄がいわば〝逆回転〟し始めた。それがJBIC総裁に財務省出身者が就くという人事につながったという見立てだ。果たして財務省の〝復権〟は吉と出るか。

(森岡英樹)

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