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2022年5月22日号
金融 最高裁「マンション節税」認めず 「0円申告」は行き過ぎだった?
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「〝伝家の宝刀〟が認められたとは驚きです」

 信託銀行の関係者がそう述懐するのは、最高裁が4月19日に示した判断。相続税の納付を巡って国税庁を訴えていた原告の上告を棄却したのだ。

 1審判決によると、原告3人は父親が2012年、94歳で死亡したことにともない、東京都杉並区と川崎市の不動産(マンション住戸の区分所有権)を相続した。原告は翌年、相続税を申告する際、その不動産の評価額を「路線価」に基づいて約3億3370万円とした上で、購入時の借入金と相殺して納めるべき相続税を0円とした。

 国税庁は、原告が申告した不動産の評価額を「著しく不適当と認められる」などとし、12億7300万円と再評価。原告は相続税2億8688万円に加え、過少申告加算税も納付すべきとした。

 裁判の主な争点は不動産の「評価額」の算定だった。前出の信託銀行関係者が言う。

「不動産は〝一物三価〟と呼ばれ、同じ物件に公示地価、路線価、固定資産税評価額の三つの価格があります。相続税の申告時は路線価を使い、今回の事件の原告もそうしました。それに対して国税庁は財産評価基本通達6項の例外規定を根拠に『路線価による評価額は認めない』とし、最高裁もそれを追認したのです」

 それが〝伝家の宝刀〟だ。背景にあるのは、国税庁が行き過ぎとみなす相続税の節税策が横行していること。大手不動産会社の幹部はこう説明する。

「同じマンションの同じ専有面積の住戸なら、低層階でも高層階でも路線価による評価額は変わりません。しかし市場価格は高層階ほど高い。その差が節税効果を生むとして、高齢者が借金して高層住戸を買う節税策が多く見られます」

 国税庁は15年、「実質的な租税負担の公平な観点から看過しがたい事態がある場合にはこれまでも財産評価基本通達6項を活用してきた」と見解を発表したことがある。相続税の節税を狙う人は要注意だ。

(森岡英樹)

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