大阪地検特捜部は何も変わっていなかった――。
不動産会社「プレサンスコーポレーション」の創業者で2019年まで社長だった山岸忍さん(59)は3月29日、大阪地検特捜部に所属していた田渕大輔と末沢岳志の両検事を特別公務員暴行陵虐と証人威迫の容疑で最高検に刑事告発した。山岸さんは「検事が私の元部下に違法な取り調べをし、事実と異なる供述を引き出した」と主張している。
特捜部は19年、学校法人「明浄学院(現大阪観光大学)」(大阪府熊取町)の土地取引を巡り、山岸さんを業務上横領の疑いで逮捕し、のちに起訴した。しかし、大阪地裁(坂口裕俊裁判長)は昨年10月、山岸さんを無罪と判決した。特捜部の検事が元部下を取り調べた際、「あなたは会社の評判をおとしめた大罪人」などと発言し、「元部下の供述には変遷があり信用できない」とした。大阪地検は控訴しなかった。
山岸さんはこう話す。
「検事は『山岸は無実だ』と供述した人の話には全く取り合わず、調書にも残さず、威迫や利益誘導によって自分たちのストーリーを押し付けました。検察は有罪だと思った人を有罪にするためには手段を選ばない組織であることを、身をもって体験しました」
山岸さんの弁護団が取り調べを録音・録画した記録を分析すると、田渕検事が元部下を「検察なめんな」「ふざけんな」などと長時間にわたって罵倒し、「会社から10億、20億では済まない損害賠償を求められる」と脅したことが分かった。末沢検事は土地取引の関係者に「山岸さんの関与を認めなければ刑が重くなる」と不安をあおっていたことが判明したという。
山岸さんの代理人、秋田真志弁護士は「大阪地検特捜部が厚生労働省の課長だった村木厚子さんを逮捕した際(09年)、村木さんの部下を脅して、彼女が不正に関わったと虚偽の自白をさせた構図と全く同じ」と話している。
(粟野仁雄)