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2022年4月 3日号
社会 ウクライナの首都キエフに由来 京都・祇園の老舗ロシア料理店
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 京都市東山区の繁華街、祇園にロシア料理店「レストランキエフ」がある。オーナーの加藤幹雄さん(84)の父親、幸四郎さん(故人)が1972年に創業した店だ。幹雄さんは歌手の加藤登紀子さん(78)の兄でもある。

 店名はウクライナの首都にちなむ。幹雄さんは何度もキエフを訪れたことがあり、ウクライナやロシアにも友人がいるという。

「完全な戦争になってしまい、心配で心配で夜も寝られません」

 創業者の幸四郎さんは京都府出身。戦前、旧満州国のハルビン市でロシア語を学び、引き揚げた後、ロシア料理店「スンガリー」を東京に開いた。京都市に出店する前年の71年、同市は当時ソ連の地方都市だったキエフと姉妹都市提携をした。その縁から店名を決めたという。

 店のステージには年代物のグランドピアノがあり、登紀子さんが歌うディナーショーを催すこともあった。

 ロシア料理だけでなく、ウクライナ料理も提供している。ロシアとウクライナの文化には共通点が多く、代表的なロシア料理とみなされているボルシチはウクライナに起源があるという。店にはロシアの大阪総領事や元キエフ市長をはじめ、ロシア人もウクライナ人も分け隔てなく訪れていた。

 しかし、ロシア軍がウクライナに侵攻。各地のロシア料理店に嫌がらせがあったと報じられている。加藤さんは「今のところ、うちにはそのようなことはなく、お客様が来なくなったということもありません」。

 ロシア人とウクライナ人の従業員が働いており、加藤さんは「ウクライナ侵攻のことを話題にしないようにしています」と気遣う。

 両国民の大半は戦争を望んだはずもない。人々が「レストランキエフ」でウクライナ侵攻を過去の悲劇として語れるようになる日はいつのことになるのだろうか。

(粟野仁雄)

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