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2022年3月13日号
展覧 焼き芋ブーム「博覧会」は盛況 人気に潜むサツマイモの課題
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 焼き芋ブームは止まらない。2月下旬、さいたまスーパーアリーナけやきひろば(さいたま市)で「さつまいも博2022」も開かれて2万人以上が詰めかけた。全国19の人気焼き芋店が出店。しかし、サツマイモの博覧会というよりは、〝焼き芋フェスティバル〟に見えたのではないか。

「そこが今後の課題なのです」と話すのは、同博実行委員会名誉委員長で九州沖縄農業研究センター所長時代には、サツマイモの人気品種を開発してきた山川理(おさむ)さん(75)。「焼き芋・干し芋はブームというより完全定着、いまや輸出などで世界にまで広がっています。農家の収益も潤沢になりました」と続けた。

 だが、消費量は嗜好(しこう)品並みで、野菜のレベルではない。

「サツマイモが野菜の扱いを受けていないのは、日本くらい。スイーツ人気が高すぎて高価な嗜好品になってしまった。年間生産量は80万㌧強で、ジャガイモは250万㌧プラス輸入の100万㌧と大きな差があります」と山川氏。

 サツマイモは食物繊維などが豊富で〝準完全食〟とも言え、山川氏はジャガイモ並みに1人年間15㌔を食べるのが望ましいと考える。だが、「栄養学や医学など食と密接にかかわる専門家は、これをお菓子同様の観点で考えているのではないか。大学でもサツマイモ研究をもっとするべきなのですが......」と指摘する。

 では、何が必要か。

「関係者が栄養学的・医学的見地から『野菜としてもっと食べよう』と呼びかけないと。一方、1㌔が300円では高くて普及しない。生産量や流通も改め、ジャガイモ並みに1㌔100円くらいに下がらないと。この両方をいっぺんにやることが必要。消費者は体にいい野菜として家庭料理に使ってほしい。農林水産省もサツマイモをはじめ野菜の基礎研究に適切な予算と人を配したら、農家への補助金より少ない〝投資〟で、大きな効果が上がるはず」

 サツマイモから日本農業の課題が見える。

(南條廣介)

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