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2022年1月30日号
社会 被災者いやした〝神戸のお嬢様〟 パンダの中国返還は年末に延期
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 神戸市立王子動物園が飼育する雌のジャイアントパンダ、タンタン(旦旦)が今年いっぱい日本にいることになり、正月から子供たちは大喜びだ。加古裕二園長は昨年末、記者会見でこう説明した。

「コロナの状況と(タンタンの)新たな病状の観察に基づき、総合的に(タンタンを中国に返還する期限の)延長期間を判断しました。高齢化に伴った症状が考えられます。劇的に良くなることはないのかもしれませんが、何とか体調維持に努めてきています」

 タンタンは阪神・淡路大震災から5年半後の2000年7月、日中共同飼育繁殖研究の一環として中国四川省から同園にやってきた。小柄で可愛らしく、〝神戸のお嬢様〟とも呼ばれる。子どもが見て喜ぶ姿は、生活再建に苦しむ被災者をいやしてきた。

 タンタンは昨年9月、26歳となった。人間でいえば70歳代だ。王子動物園は昨年4月、タンタンに心臓疾患の疑いがあると発表、中国側と連絡を取りながら治療を続けてきた。

 当初は貸与期限の同年7月15日までに中国に返還する予定だった。しかし新型コロナウイルスの影響で日本と四川省成都を結ぶ航空便が運休するなどし、病身のタンタンに負担の少ない輸送が困難になった。一旦は同年末に延期が決まったが、その後も感染拡大が収まらない上、中国側が北京冬季五輪に向けて入国規制を厳しくしたことで日本からスタッフが随行するのが難しくなった。同園が中国側とオンライン協議し、当面は日本で治療を続けることとし、返還期限を今年12月に再度延長した。

 タンタンは運動量が大きく減り、食欲が元気な頃の5分の1ほどに落ちたという。健康時の体重は80㌔ほどだったが、今は腹水がたまった影響で100㌔を超え、腹水を抜く治療も受けている。

 阪神間の人たちは大震災の1月17日が近づくとタンタンに感謝したくなる。

(粟野仁雄)

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