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2021年11月28日号
行政 町長自らが選挙人名簿を複写 神奈川・真鶴のあきれた面々
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 記者会見は衝撃の一言から始まった。「コピーしたのは私です」。10月26日、こう語ったのは神奈川県真鶴町長の松本一彦氏(55)=11月4日に辞職=だ。町役場職員だった昨年2月、違法と知りながら全有権者約6600人分の選挙人名簿抄本をコピーし、自らが初当選した同9月の町長選で利用したというのだ。地方公務員法と公職選挙法に触れる行為だが、松本氏はまず「辞職はせず、責任を果たす」と続投を表明した。

 会見では、名簿のコピーを複写して町選管職員を通じ、今年9月の町議選候補の1人に渡したことも告白。その職員は選管の事務方トップだったことも明かした。そして、会見後の報道陣の取材に一転、辞職を表明したのだった。

 10月29日の町議会全員協議会では岩本克美議長(73)が「私も名簿をもらった」と〝自供〟して議長辞任を表明する。「ほかにはいないのか?」と追及された松本氏は、元町長で町議の青木健氏(69)の名をあげ、「(当初1人としたのは)大ごとにしたくなかったから」と証言した。さらに、岩本氏と青木氏らが住民基本台帳の転出届と死亡届のリストも受け取っていたことが明るみになる。これは住基法などにも触れる。

 11月4日には議会で辞職願が同意された松本氏、町議職にとどまる岩本氏と青木氏がそろって会見した。すると、松本氏が今度は「2016年にも名簿のコピーを、町長選候補だった青木氏に渡した」と言い出したのだ。青木氏は「もらった記憶はない」と真っ向から否定している。

 かばい合ったかと思えば、責任をなすりつけ合うような権力者たちの振る舞い。濃密な人間関係が育まれた小さな港町では「町議2人は辞めず、悪いのはカックン(松本氏の愛称)だけか?」と前町長への同情論まで持ち上がる。

 今後は第三者委員会が調査する予定だ。「恥ずかしくて仕方がない」という町民の嘆きが、町の正常化に結びつくと信じたい。

(本橋由紀)

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