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2021年7月 4日号
金融 日米が誘致を急ぐ世界最大の「ファウンドリー」、TSMC
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 経済産業省の幹部が「多くの国が自国に誘致しようと、しのぎを削っている」と名指しするのは、台湾積体電路製造(TSMC)だ。世界最大の半導体受託製造会社(ファウンドリー)として知られる同社は、ウェブサイトでこう説明している。

〈TSMCブランドでの設計、製造、販売を一切しないことで、お客様との競争を排除します〉

 ここでいう「お客様」とは、米アップルをはじめとする世界の情報技術大手。台湾に複数の工場を持つほか、中国と米国にも生産子会社がある。

 TSMCは昨年、米アリゾナ州で総投資額120億㌦(約1兆3100億円)の工場を新設すると決め、建設が進んでいる。

 日本では今年3月、186億円を投じて研究子会社「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」を設立した。「3DIC(3次元集積回路)」とは第5世代移動通信規格(5G)の機能を強化した「ポスト5G」を実現するために必要な技術だという。

 5月、TSMCを巡る動きが相次いだ。21日には自民党の甘利明税制調査会長らが半導体戦略推進議員連盟の設立総会を開いた。最高顧問は安倍晋三前首相と麻生太郎財務相だ。同議連はTSMCの製造拠点を国内に誘致することなどを提言する。

 26日付の『日刊工業新聞』は、TSMCとソニーグループが合弁で熊本県に半導体工場を建設する構想が浮上したと報じた。〈構想では両社が2021年内にも半導体製造の合弁会社を設立する見通し〉とし、経産省が主導しているという。

 31日には同省がポスト5Gに関する助成対象にTSMCの日本子会社を採択したと発表。旭化成やキーエンスなど日本企業20社以上が参画し、5年間で約190億円を助成するという。

 日米によるTSMCの囲い込みが急進展してきた。

(森岡英樹)

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