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2021年7月 4日号
社会 詐欺容疑で逮捕の近大元教授 "後妻業事件"解決助けた過去
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 かつての検察側証人が被告席に立つことになりそうだ。大阪府警捜査2課が6月9日、詐欺などの疑いで逮捕した巽信二容疑者(66)。3月まで近畿大医学部法医学教室の主任教授だった。警察は巽容疑者が医療機器販売会社の元社員(52)と共謀し、医療用マスクなどを購入したように見せかけて、大学から約1780万円をだまし取ったと見ている。

 巽容疑者は関西地方で数々の司法解剖を手掛けた法医学の権威。かかわった事件の一つが「後妻業殺人事件」だった。筧(かけひ)千佐子被告(74)が財産目当てに高齢男性と結婚しては次々と殺害したとして、1、2審で死刑判決を受け、上告審理中の事件だ。

 巽容疑者は2012年、本田正徳さん(当時71)の遺体を司法解剖した。本田さんは亡くなる直前、大阪府泉佐野市の喫茶店で筧被告に会っていた。

 3年後、巽容疑者は京都府警の依頼を受け、ホルマリン漬けにして保存していた本田さんの遺体の一部を改めて調べ、青酸化合物を検出した。それが決め手の一つとなり、京都地裁は17年、筧被告に死刑判決を言い渡した。

 巽容疑者はその裁判に検察側証人として出廷した。「手掛けた解剖は4000件くらいあります」と切り出し、「私は可能な限り検体を保存することをモットーにしています。でも冷蔵庫を次々に購入するので大学の経理には苦情を言われてますわ」などと豪快に話していた。話は面白く、傍聴した筆者は閉廷後、巽容疑者と名刺を交換した。

 警察庁長官は今年2月、巽容疑者が大阪府警の顧問医師として貢献したとして、「警察協力章」を贈った。3月末日には近大を定年退職するはずだったが、一転して懲戒解雇。巽被告は容疑を否認し「懲戒解雇は不当」と主張している。起訴されれば、被告席で何を語るのか。

(粟野仁雄)

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