「相当厳しいものになると想定しています」
金融庁幹部がそう語り、危惧しているのは国際組織「金融活動作業部会(FATF)」による対日審査結果だ。7月23日の東京五輪開会式より前に結果が出るとみられている。
FATFのウェブサイトによれば、〈世界的なマネーロンダリング(資金洗浄)とテロリストの資金調達に対する監視機関〉。マネロンへの懸念が高まった1989年の主要7カ国(G7)首脳会議で設立が決まり、G7、中国、ロシア、サウジアラビアなど39カ国・地域が加盟している。
麻生太郎財務相はFATFの対日審査に危機意識が強い。金融庁の氷見野良三長官も国際畑ということもあり、マネロン対策にことのほか神経を尖(とが)らせている。前出の金融庁幹部が言う。
「5月末までにマネロンの対応計画を金融機関に提出させました。不備があれば、業務改善命令を出すことも視野に入れています」
FATFは2008年、〈(日本の)金融機関は、マネロン・テロ資金供与の疑いがあっても顧客管理を求められない〉(「対日相互審査報告書概要(仮訳)」)などとし、複数の項目がFATF勧告に「不履行」とした。14年には「08年10月の相互審査報告書で指摘した数々の深刻な欠陥に関し、日本が依然として改善に失敗していることにFATFは懸念している」と声明を出した。FATFは日本を「監視強化国」に指定しかねない状況だった。
政府は危機感を高め、対策の根幹となる改正犯罪収益移転防止法の成立を急ぎ、16年の施行とともに金融機関に対策を強く促してきた。
近年、金融機関は預金口座の開設を申し込む企業や他の法人に対し、多くの書類を提出するよう求め、審査に時間をかけるようになっている。その傾向に拍車がかかるかもしれない。
(森岡英樹)