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2021年4月11日号
社会 袴田さんの再審請求審は長期化? それでも「袴田さんは明るい」と姉
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 死刑囚の袴田巖さん(85)が求める再審について、東京高裁は3月21日、検察と弁護団に出頭させて初の3者協議を開いた。争点は証拠の衣類に残る血痕の色だ。

 1966年6月、静岡県清水市(現静岡市清水区)のみそ製造会社専務とその家族の4人が殺された。警察は同年8月、袴田さんを強盗殺人などの容疑で逮捕。それから約1年後、従業員が工場内のみそタンクから赤い血痕がある衣類5点を見つけた。検察はそれを犯行時の着衣だとした。

 袴田さんが衣類をみそタンクに入れたとすれば、1年以上みそに漬かっていたことになる。最高裁は昨年12月、血痕の色について、化学反応の影響を考慮して検討する必要があると判断。弁護団(西嶋勝彦団長)は衣類をみそに漬けた場合、血痕の色がどう変化するかを調べる実験を重ねた。小川秀世事務局長が言う。

「極端に白いみそに漬けるなど可能な限り条件を変えてみました。しかし、いずれの場合も血痕は黒ずみ、赤いまま残ることはありませんでした」

 弁護団は「検察が『血痕の赤みが消えないことがある』というなら、証明すべき」と主張。検察は「専門家の意見を踏まえて意見書を出す」とし、長期化も予想される。

 袴田さんは死刑判決が確定した後、2度にわたり再審を請求した。ようやく2014年、静岡地裁は証拠が捏造(ねつぞう)された可能性を明言し、再審開始と48年ぶりとなる袴田さんの釈放を決定。4年後、東京高裁が再審請求を棄却したものの、最高裁は昨年12月、高裁に審理を差し戻していた。

 袴田さんは拘禁症状の影響があるというが、姉の秀子さん(88)は記者会見で「昨年12月の(差し戻し)決定でとても明るくなりました。周囲からの『頑張ってください』が『よかったですね』に変わって巖も分かるようですよ」と朗らかだった。

(粟野仁雄)

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