サンデー毎日

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2020年12月27日号
ツケはすべて国民に!「菅・安倍」コロナ失政の本質
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倉重篤郎のニュース最前線

◇俊英エコノミスト熱闘対談 軽部謙介×西野智彦

◇経済不活性化と国債バブルの危機 日銀は政治に隷属してしまった

菅政権は「Go To」に執着し、PCR検査は拡充されない。感染拡大による経済停滞で国民の生活は立ちゆかなくなりつつある。コロナ不況の前提にはアベノミクスの失政が横たわっており、いまこそ経済危機の本質を捉え、脱出策を講じなければならない。「ニュース最前線」倉重篤郎が、2人の俊英エコノミストに訊く――。

◇安倍「異次元緩和」 菅「財源論議なき70兆円」

連日の感染者増、医療現場からの悲鳴が聞こえる中、菅義偉政権下で「コロナ失政」が進行中だ。街中の無症状感染者を炙(あぶ)り出すPCR検査体制が増強されない。「Go Toトラベル」の執着からブレーキとアクセルを同時に踏む愚行を止められず、結果的に起きているのは、補助金付きの移動促進→感染拡大→医療崩壊・経済活動収縮という悪循環だ。医療関係者は疲弊し、タクシーや飲食店はガラガラだ。企業倒産、失業増の懸念が高まっている。

「失政」で思い出すのは、1980年代から90年代にかけての金融バブルの生成、崩壊である。超低金利の長期化や急激な引き締めといった政策ミスの連続が日本経済を停滞させ、「失われた20年」を招来した。

この稿では、もう一つの失政に焦点を当てる。安倍晋三政権下で8年弱続いた異形の経済政策・アベノミクス(異次元金融緩和政策)だ。この政策が国債管理政策上の深刻なリスク、財政規律喪失、日銀財務悪化など負の副産物を胚胎(はいたい)していることは、当欄でも何回か取り上げ、「日本の死に至る病」ではないかと指摘してきた。この「異次元失政」の本質を押さえることが、コロナ下での真の経済リスクに肉薄するための必要十分条件だと考えた。

ナビゲーターは、軽部謙介、西野智彦という2人の経済ジャーナリストにお願いする。軽部氏は『ドキュメント 強権の経済政策―― 官僚たちのアベノミクス2』(岩波新書 2020年6月)で、霞が関官僚たちの視点から、西野氏は『ドキュメント 日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀』(岩波書店 同年11月)で、日銀に焦点を絞った形で、政策の出自と功罪を検証した。2人は金融バブル崩壊時にも優れた共著『検証 経済失政 誰が、何を、なぜ間違えたか』(岩波書店 99年)を残している。

――菅政権は12月8日、コロナ対策名目で事業規模で73兆円、国費30兆円の経済対策をぶち上げた。20年度の新規国債発行額は100兆円を超える可能性がある。

西野 財政のタガが外れた。MMT(現代貨幣理論)という、自国通貨建てならばいくらでも借金は可能とする、以前は考えられないような議論が自民党内にもある。量的緩和をやめても、もっと借金しても日銀が国債を買ってくれる、財源は大丈夫だという錯覚が与党内にあるのではないか。

軽部 13年1月に政府と日銀が交わした共同声明では2%のインフレ目標だけでなく、財政健全化も条件になっている。それがいつの間にか忘れ去られている。

――コロナ下といえども、財政規律がないがしろにされている。異次元の金融緩和に異次元の放漫財政が加わり「ダブル異次元」状態だ。このツケがどう出てくるか。まずは、金融異次元の背景を分析してほしい。

西野 98年日銀法改正にまで遡(さかのぼ)らないと理解できない。接待疑惑その他で当時大蔵省叩(たた)きがあった。それが、強すぎる同省の権限を削(そ)ぐという政治的要請となり、予算編成権移行、歳入庁創設論議も出たが、いきなり本丸ではなく、取りあえず入り口議論として大蔵省の強い影響下にあった日銀を独立させるため、日銀法をいじろうとなった。

軽部 日銀法は98年を含め戦後3回改正の機運があった。旧法は昭和17年の戦時立法で、そのまま戦後まで続いた。大蔵省には日銀に対し一般的な業務指揮権と総裁解任権があり、大蔵省が最強官庁、オールマイティーであることの一つの象徴的事例だった。それがバブルを生んだ原因ともされ、大蔵権限の一つである日銀を引っぺがそうという政治ムーブメントだった。

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