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2020年12月13日号
本人直撃!なぜ「福島瑞穂」は嫌われたのか 社民党が消滅の危機
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老舗政党が危機にひんしている。75年の歴史を持ち、首相も輩出した社民党だ。党大会では怒号が飛び交い、党首が糾弾されたという。社民党に何が起きているのか。関係者の証言から探るとともに、厳しい批判も浴びた福島瑞穂党首を直撃し、将来の展望を聞いた。

旧社会党時代から数えて75年の歴史を誇る社民党が消滅の危機を迎えている。11月14日の臨時党大会で、立憲民主党との合流推進派と社民党残留派に分裂することが正式に決まったのだ。社民党所属の4人の国会議員のうち3人は合流推進派。社民党は福島瑞穂党首1人の政党になる見込みだ。村山富市元首相らを輩出した老舗政党は崖っぷちに立たされている。

臨時党大会は大荒れだった。「社民党を残し、立憲民主党への合流も認め合う」という分党方式の議案に賛否両論が飛び交い、ヤジの応酬になったのだ。

「社民党は政党要件のある政党として存続します。困難な道ではありますが、社民党を再生していきましょう」

大会冒頭のあいさつで参院議員の福島氏は、こう呼びかけた。だが、これに照屋寛徳衆院議員(沖縄2区)がかみついた。

「福島党首のあいさつを聞いて心底むなしい、悲しい。先輩方が築いた遺産をすべて食い潰したのは党首だ。総選挙に勝利するためには、党首が参院議員をやめて、衆院に鞍替(くらが)えして立候補しなさい」

大会には全国から167人の代議員が出席。照屋氏は沖縄の代議員で合流賛成派。照屋発言をきっかけに激しいヤジが乱れ飛んだ。

照屋氏に次いで発言した広島県の代議員は反対の立場から、ナチス・ドイツの強制収容所を引き合いに出し、合流を「アウシュビッツ行き」と批判した。

「社民党で闘うことを諦めて立憲に行く人が、現在、社民党で頑張っている党員を立憲に引っ張り込もうとすることは異常なことだ。社民フォーラムなどという、アウシュビッツ行きのような列車に、無理やり乗せないでもらいたい」

社民フォーラムとは、立憲との合流賛成派の党員や党組織が今後、情報交換などのために設立する政治団体である。広島の代議員の発言を受け、富山県の代議員が照屋氏に加勢し、福島氏を批判した。

「議案は、社民党の道も、合流の道も、どちらも理解し合おうとの内容にもかかわらず、党首のあいさつは一方的に社民党を残すとだけ言っている。まったくリベラルではない」

代議員の発言が続き、福島氏が照屋氏に反論した。

「照屋代議員からの、私のみが社民党を食い潰してきたとの批判は、極めて残念だ。私は参院の党・全国比例区から国会議員にさせていただいた。私のバッジは皆さんのおかげだ」

「社民党を解党・合流はしないことになったので、社民党を再生させるために、私の力を存分に使わせていただきたい」

採決も荒れた。反対派の代議員13人が、賛成派の吉田忠智幹事長(参院議員)の解任動議を提出したのだ。これは反対多数で否決された。一方、分党の議案は賛成84人、反対75人の僅差で辛うじて可決された。

大会後の記者会見で、照屋発言について福島氏は、「(代議員の)女性から『そんなことないよ』と反論の声が出たのは心強かった」と語った。今後の社民党については「千里の道も一歩から。若者や女性主役の政党にする」と述べたが、具体策は示せなかった。

立憲との合流問題は昨年12月6日、野党結集を目指す立憲の枝野幸男代表が、社民党の又市征治党首(当時、元参院議員)に合流を呼びかけたのが発端だ。枝野氏の呼びかけを受け、又市氏は社民党を解党し、立憲に合流する方向で党内論議に着手した。今年2月の定期党大会で、反対派の福島氏が党首に無投票で選ばれた。しかし、合流への流れは止まらなかった。

背景には、社民党を取り巻く危機的状況がある。公職選挙法は、政党の要件として「所属国会議員5人以上」か「直近の国政選挙で得票率2%以上」が必要と定めている。社民党は国会議員が4人だが、昨年の参院選比例区の得票率でギリギリ2%(2・09%)を超え、何とか政党要件を満たしているのが現実だ。

「公選法の規定では、来年に予想される衆院選で、たとえ社民党の得票率が2%を切った場合でも、2022年までは社民党は政党として存続する。しかし、その後の展望が全くない。党の現状では得票率2%は不可能。国政政党として生き残るためには立憲との合流しかないということになった」(社民党本部職員)

今回の分裂劇には、有力支持組織・自治労の非主流派の動きも影響している。自治労は地方自治体職員らによる産業別労組で、組合員数は約79万人。これまで立憲を支持する主流派と、社民党を支持する非主流派がしのぎを削ってきた。

「しかし、野党結集の流れの中、全く存在感を示せない社民党に自治労非主流派は危機感を強め、『社民党解党・立憲と合流』という流れに乗った」(前出職員)

社民党を支持する非主流派は、大分や富山の県本部を筆頭とする通称〝13県本部〟だ。吉田幹事長は自治労大分県本部の元委員長。又市前党首も自治労富山県本部の委員長だった。支持労組に後押しされた吉田幹事長は、今年10月9日の社民党の全国幹事長会議で解党による合流の大会決議案をまとめ、11月14日の臨時党大会に諮るというシナリオを考えていた。

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