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2020年12月 6日号
感染爆発! 冬コロナから身を守る5原則 倉重篤郎のニュース最前線
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◇感染症ムラに忖度しない医師 上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が徹底分析

コロナ第3波が襲来し、感染の拡大に歯止めがかからない。全国の1日の感染者数は2300人を超えた。私たちはこの状況下でいかにわが身を守ればいいのか。政府や感染症ムラに忖度せず、世界の最新研究を吸収し続ける上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が、あり得べき最良のコロナ対策を語る。

❶ 「コロナかかりつけ医」を持とう

❷ インフルワクチンは二重に有効

❸ 屋内で声を出す場面ではマスクを

❹ 高齢者は積極的に体を動かそう

❺ 軽症でも長期合併症の可能性が。甘く見るな

北半球が冬入りし、欧米ではコロナがまた再拡大の兆しを見せている。欧州各国ではロックダウンが相次ぎ、米国ではコロナ不安が大統領選の趨勢(すうせい)にも影響を与えたとみられる。日本も他人事(ひとごと)ではない。11月に入り感染者数が連日1000人を超え、明らかに「第3波入り」(中川俊男日本医師会会長)した感が強い。

深刻なのは北海道だ。道内では100人超の感染が5日から13日間継続、鈴木直道・北海道知事は7日、札幌の繁華街ススキノの飲食店に営業時間の短縮などを要請、17日には札幌市民に対して不要不急の外出と市外との往来自粛を要請した。もう一つ気になるのは、関西圏だ。17日には兵庫で過去最多107人、京都も同49人。大阪でも過去2番目の269人となった。

これにショックを受けているのが菅義偉政権だ。いずれも観光地であり、政権の看板である「Go Toトラベル」事業の影響を受けた形跡があるからだ。

政府関係者によるとこうだ。北海道を対象にコロナウイルスのゲノム解析調査をしたところ、明らかに東京からの観光客による感染の疑いが出てきた。もう一つ深刻なのは、大阪だ。感染者が塊としてまとまって出るクラスター感染の域はすでに超え、無症状感染者が街中のどこにいるかわからない、という市中感染にまでフェーズが上がっている可能性が高い、という。

「Go Toトラベル」は、菅政権の一丁目一番地の政策だ。観光・運輸族のドンである二階俊博・自民党幹事長と官房長官だった菅氏が7月22日、周囲の反対を押し切ってスタート、9月末までに2518万人泊、割引支援総額1099億円を稼ぎ、すでに年末年始は全国どこのリゾートも予約で満杯という「実績」があるだけに、そう簡単にやめられなくなっている。

一方で、「Go To」が感染拡大の一因となっていることが判明した以上、その見直しが必要で、すでに自民党内では「せめて北海道ははずすべきだ」との縮小論が出ている。菅氏自身は「専門家も現時点においてそのような状況にはないという認識を示している」(13日)と強気だが、むしろ政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は「(緊急事態宣言)回避のために、今が非常に重要な時だ」(12日)と警告。官邸、専門家の認識のズレが生じている。

市中感染問題も重要だ。厚労省、感染研を軸とした「感染症ムラ」では、感染者と濃厚接触者に絞ったクラスター追跡調査を中心に対策を打ってきており、市中感染者を対象にしたPCR検査の拡大には消極的だった。安倍晋三前首相が検査増を命じても、陰で厚労官僚が火消しに回るなどして、現時点の1日あたりの検査能力は最大10万300件(18日厚労省HPより)でしかない。

政権としては「Go To」見直し、PCR検査の抜本拡大、という二つの難題を抱えたことになる。前者は経済重視を掲げる政権の命綱に関わり、後者は前政権ができなかったことへの挑戦だ。学術会議問題でボディーブローを浴びる政権がどこまで対処できるのか。期待はできないが、それだけにこの状況下、我々は最低限自分の身だけは守る知恵を持ちたいと思う。

そんな問題意識で、上昌広氏(医療ガバナンス研究所理事長)の門戸を叩(たた)いた。当欄でPCR検査が増えない謎を解いていただいたことがある。世界のコロナ医療情報にも通じている。現役の臨床医師でもある。

札幌が深刻だ。

「過去に学んでいませんね。新宿・歌舞伎町の蔓延(まんえん)はPCR検査を速やかにしなかったことから起きた。ススキノも前広に一斉検査すればよかった。百歩譲って『Go To』をやらざるを得ないとしても、歌舞伎町で懲りているはずなのに、ススキノでそれが生きなかった。大した予算ではなかったはずだ。クラスター化を未然防止できたのに、ここまで来ると道経済全体に大きなダメージを与えてしまう。後悔が残る」

うさぎとマツコの人生相談
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