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2020年11月15日号
菅義偉と竹中平蔵の蜜月の仲 小泉政権では〝部下と上司〟が進める各論政治の危うさ
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臨時国会が始まった。菅義偉首相が誕生して事実上、初の本格的な国会論戦になる。だが、語られる政策は各論ばかり。その背景について、かつては菅氏の上司だった〝経済ブレーン〟に直撃した。漂うのは、弱者切り捨ても辞さない、新自由主義経済の危うさだ。

▼ブレーンが語る新自由主義の中身

▼相次ぐ携帯料金値下げ、デジタル化の実像

就任から40日。菅義偉首相は10月26日、ようやく開かれた臨時国会で所信表明演説を行った。

「私たちが8年前の政権交代以来、一貫して取り組んできたのが経済の再生。今後もアベノミクスを継承し、改革を進めていく」

すなわち、大企業や株主に偏ってしまった前政権の経済政策を継承するのか。

「成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会の実現に最大限注力していく。我が国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言する」

つまり、脱炭素社会の実現のため原発増設など、さらに容認するのか。

「インバウンド、観光や農業改革などにより、地方への人の流れをつくり、地方の所得を増やし、地方を活性化し、それによって日本経済を浮上させる」

地方創生にしては具体性に欠けるのではないか。

演説は全体的に短く羅列されたメッセージだった。

「少子高齢化で人口も減って地方は滅びる。年金はどうなるのかなど将来不安を抱えたまま。希望はあるのか。どんな国になっていくのか。これから先の日本という国の経済、社会の形は残念ながらはっきりと見えなかった」(野党政調幹部)

菅内閣は個別政策を次々に進め、スピードは速い。携帯電話料金の値下げ、デジタル庁設置、縦割りの省庁に横串を刺して効率化、ハンコをなくす、不妊治療の保険適用......。だが、国家ビジョンは見えてこない。

そんな中、菅首相の有力ブレーンとされる竹中平蔵氏とBS11の報道番組「報道ライブ インサイドOUT」で一緒に出演した。竹中氏は小泉純一郎政権で重用され、総務相や経済財政担当相を歴任。総務相時代には菅氏が副大臣だった。以後、自民党政権に深く関わり、菅政権が設置した成長戦略会議のメンバーだ。人材派遣業大手のパソナグループ会長、東洋大教授でもある。政権誕生の2日後の9月18日、菅首相と二人きりの会合を持っている。

安倍晋三前首相の側近はこう評していた。

「竹中氏といえば、小泉政権が取った構造改革路線の旗振り役で、規制改革によって民間活力を高めるという考え方。安倍さんも随分頼ってきた。だが競争社会を招き格差も生んだという批判は絶えなかった。新自由主義経済論者の象徴」

菅政権は新自由主義路線を取るのか。それでは格差が再生される恐れもある。経済政策の全体像などが見えない中、竹中氏はそれを菅首相と共有するキーマンである。私もキャスターとともに率直に聞いた。

――各論の先にどんな社会があるのか。省庁のデジタル化ならマイナンバーカード、その先には運転免許証や保険証、さらに口座やクレジットカードが紐(ひも)づくのか。そうなると社会生活様式全体が変わってしまう。

「改革に反対する人はみんな、そう言うんです。私が小泉内閣でやった時、小泉さんが最初に言ったのは『総論ではなく各論をやれ』と。各論をやっていく中で総論は浮かび上がってくる。例えば、アメリカはホワイトハウスが総論など言ってないんですね。各論から入っていく。菅政権は各論をやる内閣。総論はいくらでも言えるんです」

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