人材派遣大手のパソナグループが本部機能を東京都千代田区から兵庫県の淡路島へ移す。同社の9月1日付発表によれば、異動人数は人事、財務経理、経営企画など本部機能を担う約1800人のうち約1200人。同月に移転を開始し、2024年5月末までに完了する予定だという。「働く人々の『真に豊かな生き方・働き方』の実現と、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策の一環」を理由に挙げた。
2日付『神戸新聞』に載った南部靖之代表のインタビューによると、「淡路のオフィスは淡路市内で賃貸したり新たにつくったりして、3、4カ所用意する」。役員の多くは淡路島に常駐し、南部氏自身も「近く、妻と神戸から淡路に引っ越す」と話した。社員については「手を挙げている人がめちゃくちゃ多くて。移動したくない人はしなくていい。子どもを持つ社員で、来たがる人が多い」。
パソナは08年から農業人材の開発をする施設を淡路島に開設した後、小学校跡地を改装したレストランや野菜販売店、それにアミューズメント施設などを島内にオープンした。
人口約13万2000人の淡路島は過疎化に悩んでおり、淡路市は「段階的にとはいえ1200人も増えるのはありがたい。パソナさんに頼らず企業誘致も進めたい」(秘書広報課)と歓迎する。
情報誌編集長は同社の狙いをこう見る。
「南部さんはソフトバンクの孫(正義)社長とともにベンチャーの先駆者として知られた人で、『政商』的なやり手で同郷の西村さん(康稔・経済再生担当相)などに食い込んでいる。人脈を使って淡路島を特区に指定させ、補助金や税優遇を手にする狙いがあるのでは」
同社会長は小泉純一郎政権で経済財政政策担当相などを務めた竹中平蔵氏。淡路島は11年、地域活性化総合特区の指定を受けている。激変しそうな島の未来に「島がパソナに乗っ取られるのでは」(淡路市の男性)と不安視する声も上がっている。
(粟野仁雄)