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2020年6月 7日号
官邸崩壊!黒川東京高検検事長「秒殺」暗闘
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乱世の到来か。安倍政権〝肝いり〟だったはずの検察幹部の定年延長を巡る検察庁法改正案は今国会での成立は見送りに。焦点だった黒川弘務・東京高検検事長は賭けマージャンで辞職し、「秒殺」された。失態が続く現政権。新たな勢力も結集の兆しを見せている。

今年1月の通常国会が始まる直前だ。自民党の元幹部は、こう話していた。

「今国会で首相官邸が一番ピリピリしているのは『桜を見る会』問題でも何でもない。河井克行・案里夫妻に絡む公選法違反事件だ。何を恐れているか。彼らに渡った1億5000万円の選挙資金の原資だ。その金が誰の指示で、どこから出て、どう使われたのか。検察がそこを追及していくと政権に大きな打撃になる」

東京高検の黒川弘務検事長(5月22日に辞職承認)を巡る問題は、もはや周知の通りだろう。まず現政権は、その定年延長を正当化しようとしてきた。

冒頭の元幹部は、こうした経過を見ながら「言った通り。そうやって政権が黒川氏を盾にしようとした発端こそが河井事件で、その捜査を何とか防ぎたかったからだ」と改めて話す。

河井夫妻を巡る事件の焦点は、案里氏の初当選した昨夏の参院選を巡り、夫の克行前法相らが絡む買収疑惑などを検察当局が立件するのかに移っている。

そして、冒頭の元幹部は河井事件と黒川氏を巡る問題は絡み合っているというのだ。「安倍官邸と検察の泥仕合」と表現した上で、次のように解説する。

「河井事件が広がらないよう、黒川氏の検事総長就任の可能性をちらつかせる。それで検察を牽制(けんせい)した。ところが、逆に検察の現場を発奮させてしまった。克行氏の現金配布などへの関与の有無についても捜査を進めた。官邸は検察庁法改正により、時の政権が検察人事に介入できる特例を設け、再び検察を牽制した」

まさに泥仕合だ。そこに『週刊文春』が、緊急事態宣言下での賭けマージャンをスクープする。その経緯を官邸に近い自民党関係者が明かしてくれた。

「官邸と自民党国対は『強行採決』と決めていた。今回は多くの著名人が政権のやり方に大反対のツイートをした。そうした世論もあって慎重姿勢を取っていたが、5月16日までは『最後は採決に持ち込む』と決めていた。しかし、17日の日曜日、文春が黒川氏やマージャン相手への確認取材に動いた。黒川氏は法務省や官邸に連絡した。翌18日、安倍晋三首相は法案の今国会での成立を見送ると決めた」

前出の自民党の元幹部は安倍首相の敗北だとみる。

「人事カードを失ったことは官邸にとって痛い。検察は河井事件について立件を視野に進めるだろう。原資について明らかになれば、それは新たな政局の火種になる可能性もある」

そして、新型コロナウイルスも安倍政権を弱体化へと向かわせている。

「海外では有事に政権の支持率が上がることが多い。今回なら台湾や韓国、ヨーロッパではドイツなど。めちゃくちゃな米国のトランプ大統領でさえ、大風呂敷を広げて『戦いを制する』などと演説した直後は、支持率が5㌽は上がった。それに比べて安倍首相はどうか」(自民党ベテラン議員)

最新のマスコミ各社の世論調査は、『朝日新聞』が5月中旬に行い、内閣支持率は前月から8㌽も下落して33%だった。不支持率は47%。この数字は同社調査としては森友・加計(かけ)問題で批判が高まった2018年3、4月の31%に次ぐ低さだ。永田町では支持率が20%台になると「危険水域」(前出のベテラン議員)とも言われ、5月23日の『毎日新聞』の調査は27%だった。

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