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2020年5月 3日号
〔ストップ!感染拡大〕「検査」「診療」阻む5つの壁
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安倍晋三首相が4月16日、「一律10万円の現金給付」を言い出した。諸外国はとっくに実施している政策だ。なにかにつけ行動が遅く、主要国とかけ離れた日本の新型コロナウイルス対策。なぜ立ち遅れているのか。何が壁になっているのか。

▼PCR遠ざけるクラスター対策班

▼遠隔診療の遅れに日本医師会の影...

1 なぜPCR検査が少ない?

「なぜすぐに検査を受けられたのか」

インターネットにそんな書き込みが噴出したのは、「報道ステーション」(テレビ朝日)の富川悠太アナウンサーが感染したことが判明した直後だ。「発熱が何日も続いても保健所に検査を拒まれる」という声が多い。

日本にある米国大使館のウェブサイトには、自国民に向けた4月3日付の「衛生警告」が載っている。

〈日本政府は検査を幅広く実施しないという決定をしており、新型コロナ感染症の有病率を正確に評価することは難しい〉

日本の検査数はどのぐらい少ないのか。統計サイト「ワールドメーター」は、各国の衛生当局が発表したデータを一覧表示している。それによると、日本の人口100万人当たりの検査数は762件(4月17日夜現在)。同サイトが取り上げる213カ国・地域の中、115位だ。先進7カ国で最多のドイツは約2万件、日本に次いで少ないフランスも5114件。経済協力開発機構に加盟する36カ国中、日本より少ないのはメキシコだけ。日本が異常に少ないのは明らかだ。

前新潟県知事の米山隆一医師はこう説明する。

「PCR(遺伝子検査)が少ないのは、厚生労働省のクラスター対策班が不合理なこだわりを持っていることに起因すると考えています。つまり、『医療リソースを可能な限り温存し、公衆衛生的手法で解決できる』という考えが問題です」

クラスター対策班は感染者が増え始めた2月25日、厚労省が設置した。東北大の押谷仁教授(ウイルス学)ら感染症の専門家からなり、「クラスター」(感染者の集団)の早期探知などを目指す。

「対策班は『PCRを増やせば希望者が医療機関に押し寄せ、医療現場が崩壊する』と踏んだ。しかし、希望者と他の通院者の動線を明確に分けるなどすれば、PCRを増やすことは可能でした。もっと検査して軽症者や無症状者を把握し、自重してもらわないと、感染がさらに拡大してしまいます」(米山氏)

検査体制の拡大に慎重だった大阪大の宮坂昌之名誉教授(免疫学)は、考え直した。

「これまで大量にスクリーニング(検査)できる体制がなかったのが何より問題です。多くできることに越したことはありません」

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