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2020年4月19日号
芸術「表現の不自由展」で再び対立 公金を巡り河村市長と大村知事
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昨夏、従軍慰安婦から着想した少女像などに批判が殺到して中断、再開した「表現の不自由展・その後」。不自由展を含めた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の閉幕から約半年を経て、3月下旬に「公金」を巡る決定が相次いだ。

「どえらげにゃあ(最大限に)丁寧なご議論をいただいた」。3月27日にこう語り、報道陣に満面の笑みを見せたのは不自由展批判の急先鋒(せんぽう)、名古屋市の河村たかし市長だ。この日、同市が一度は芸術祭のために支出すると決めていた約1億7100万円の「負担金」の取り扱いを議論した第三者検証委員会(座長=山本庸幸(つねゆき)・元最高裁判事)は、未払い分約3400万円の「不交付はやむを得ない」とする報告書を提出した。これを受け、河村氏は未払い分を「支払わない」と明言したのだ。

検証委の「不交付容認」の理由は、不自由展の中断と再開を決めた際、芸術祭実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事が会議を開かず、会長代行の河村氏の発言の機会を奪ったことだった。ただ、委員5人の意見は当初から割れ、「不交付容認」に対し、元名古屋高裁長官の中込秀樹氏が「事業は中止・廃止されることなく完了した」、美術批評の田中由紀子氏も「あまりにも狭量」と反対した。最後は座長も議決に加わり、3対2で決したが、昨年末から3回にわたる議論は平行線のままで、「丁寧」には程遠いものだった。

一方、文化庁は3月23日、全額不交付としていた補助金を、約15%減額して交付すると発表した。理由として「会場の安全を脅かす事態が想定されていたのに申告しなかった」と県が認めてきたことを挙げた。

「国を提訴する」と一時は鼻息が荒かった大村氏だが、トーンダウンの理由は「話が折り合った」と繰り返すだけ。片や、負担金不交付の名古屋市には法的措置をとる考えだ。

新型コロナウイルス対策の記者会見で同席するなど融和の兆しもあった河村氏と大村氏。不自由展を巡る対立は、尾を引きそうだ。

(井澤宏明)

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