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2020年3月29日号
民主主義を目指さない社会 なぜ日本の統治機構が崩れ始めているのか?=内田樹
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〈ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する〉と、日本国憲法は高らかに宣言した。施行から73年、我々は「民主主義にいかなる価値があるか」を自分の言葉で語れるだろうか。思想家の内田樹氏は、それができなければ民主主義は成り立たないと訴える。

統治機構が崩れ始めている。公人たちが私利や保身のために「公共の福祉」を配慮することを止(や)めたせいで、日本は次第に「国としての体」をなさなくなりつつある。誰かの怠慢や不注意の帰結ではない。過去30年ほどの間、日本国民一人一人の孜々(しし)たる努力の成果である。

私はこの現象をこれまでさまざまな言葉で言い表そうとして来た。「反知性主義」、「ポピュリズム」、「株式会社化」、「単純主義」などなど。そして、最近になって、それらの徴候が「民主主義を目指さない社会」に固有の病態ではないかと思い至った。その話をしたい。

過日、「表現の自由」について講演を頼まれた。頼まれて、表現の自由とはそもそも何のために存在するルールなのか考えた。たしかに、私たちの民主主義的な憲法は表現の自由を保障し、「公共の福祉」に反しない限りその自由を抑制することはできないとしている。でも、表現の自由を保障することでどのような「善きもの」がもたらされるのか?人を憤激させるような表現や、人が大切にしているものを踏みにじるような攻撃的な表現にも自由は保障されるべきなのか?表現してよいものといけないものを公的機関が判定することは許されるか?こういう問いに即答するのはむずかしい。

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