異常事態だ。日経平均株価は一時、昨年1月以来の2万円割れ。外国為替市場でも円が急騰し、約3年4カ月ぶりに一時、1㌦101円台の円高になった。新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃はそれだけ大きい。影響は〝今世紀最悪級〟だというのだ。
「大打撃?それどころじゃないですよ!」
大手居酒屋チェーンの幹部はこう嘆く。歓送迎会シーズンの3~4月に半年分の利益を稼ぎ出す店が多いというが、「今年は予約がほとんど入っていないんです」。
新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、政府が不要不急の外出や会合の自粛を呼びかけているのは、ご存じの通り。居酒屋チェーン幹部が続ける。
「まあ、居酒屋は不要不急の代表格のように見られていますから。人が狭い場所に集まるから感染のリスクがある、と。我々は食中毒を防ぐためにウイルスや病原菌といった見えない敵と戦ってきた自信があります。ただ、症状がなくても人にうつしてしまう新型コロナは戦い方が分からない。本当はお客様においしいものを食べてもらって栄養をつけ、免疫力を高めてほしいんです」
日本経済はどうなるのか。実は2019年10~12月期の国内総生産(GDP)成長率は、すでに前期比1・8%のマイナスだった(実質ベース)。消費増税の影響で個人消費が落ち込んだためだ。今、エコノミストに今後の見通しを聞くと、口々に「今年もマイナス成長」という悲観シナリオを語るのだ。シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは、こんな見方をする。
「海外からの旅行者の減少だけで、20年1~3月期の成長率は前期比0・2ポイント程度、押し下げられると見ています。我々エコノミストは、2四半期連続のマイナス成長となれば『テクニカル・リセッション』。つまり、景気の後退局面に入ったとみなします」