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2020年2月23日号
北朝鮮 ウイルス対策強化で国境を封鎖 生活必需品の不足を招く恐れも
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北朝鮮も新型コロナウイルスの拡散への対策に追われている。北朝鮮国外に滞在し、2月上旬に帰国予定だった北朝鮮関係者は1月下旬、「3〜4日ぐらい待てば帰国できるだろう」と楽観していたが、国境封鎖や鉄道・航空機などの国際交通手段の停止など北朝鮮政府が矢継ぎ早に対策を打ち出したことで、帰国をあきらめたと打ち明ける。

特に北朝鮮当局は2月に入り、「毎日3万人の保健医療従事者を動員」(『労働新聞』)し、「たった一人の被害者もいないように」と対策に必死だが、感染者が出たとの情報がある。1月13日以降に北朝鮮に帰国した出張者や外国人との接触者を監視したり、各市・道などに「非常防疫対策指揮部」を設置し、消毒など防疫対策や国民への予防策への周知などを徹底させている。特に中国と国境を接する慈江道(チャガンド)や咸鏡(ハムギョン)北・南道では防疫所をさらに設置するなど対策強化をアピールしている。

一方で、国境封鎖による生活難がとても心配されている。ウイルス対策が強化されるあまり、生活物資の流通が滞り、日常生活に大きな支障を来すのではないか、ということだ。なぜなら、小麦粉や砂糖、食用油といった食料品や生活必需品は、需要を自国で満たすことはできず、大部分を中国から輸入しているためだ。

そのため、国境封鎖措置は長く続けられないという見方も支配的だ。もし見切り発車的に封鎖を解除すれば、コロナウイルスも流入して大量の患者発生という最悪のシナリオが現実味を帯びてくる。

例年、中国からの援助・支援を受けるために、北朝鮮の対外経済省幹部が年末年始にかけて訪中し調整するのが通例なのだが、今年はまだ訪中していない。厳しい経済制裁が続き、北朝鮮経済は中国からの経済支援で下支えされているのも実情だ。北朝鮮当局は人命と経済運営のジレンマに、今後強くさらされることになるだろう。

(浅川新介)

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