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2020年2月23日号
そんたく検事総長誕生の布石か 東京高検検事長の定年延長の謎
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政府が1月31日に閣議決定した黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年延長を巡り、定年1週間前の急な決定の不自然さを国会でも野党から追及され、波紋を呼んでいる。

東京高検検事長は検事総長に次ぐナンバー2のポスト。65歳定年の総長以外は63歳が定年だ。稲田伸夫・検事総長(63)は、慣例のため就任から2年を迎える今夏に勇退するとみられていた。

その後任はだれか。黒川氏は誕生日前日の2月7日をもって退官するはずだった。このため長年黒川氏とライバル関係にあった林真琴・名古屋高検検事長が東京高検検事長に就き、今夏、次の検事総長に就任というのが昨年来の法務・検察の見方だった。

だが、黒川氏の勤務が半年先の8月7日まで延長されることで、7月30日に定年を迎える林氏の総長就任の目が消え、黒川氏の可能性が残った。まさに逆転人事である。

「これまでの慣例を破る大どんでん返しの人事だ。次の検事総長は林氏で決まりというのが大方の見方で、本人も昨年11月ごろ、東京に戻ると周囲に漏らしていたくらい」

そう言うのは、官邸事情に詳しいジャーナリストだ。この異例の閣議決定の背景を4点あげる。

「一つは昨年暮れのゴーン日産前会長の脱出劇の行方だ。逮捕の背後に日本の政府関係者がいるとしながら、レバノンでの記者会見では実名を挙げなかった。政権にとっては不気味だ。次にIR疑惑で今は否認を続ける秋元司議員がしゃべりだしたら収拾がつかない。IRはまさに菅義偉官房長官の主導する案件だ。さらに公職選挙法違反が濃厚の『桜を見る会』の地元後援者向けの前夜祭、そして広島地検が力を入れる河井克行・案里夫妻の疑惑。これらの成り行きを見ながら、万一のために安倍政権、特に菅官房長官に近い黒川氏を残したということではないか」

ここは21年の定年まで1年8カ月ある稲田検事総長に慣例を破り、政治との距離を取って検察の中立を貫いてもらうしかない。

(田口嘉孝)

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