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2020年2月16日号
ナビ北朝鮮 金委員長の叔母が6年ぶり登場 一族の結束を国内に示すためか
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北朝鮮・平壌(ピョンヤン)で行われた旧正月記念公演に、金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長夫妻と妹の金与正(ヨジョン)氏が観覧した。ところが、そこに金委員長の叔母・金慶喜(ギョンヒ)氏(73)も出席したことが、大きな関心を集めている。

金慶喜氏が公の場に姿を現したのは、実に6年半ぶりのことだ。夫でかつては権力ナンバー2と呼ばれた張成沢(チャン・ソンテク)氏の妻であり、故・金正日(ジョンイル)総書記の実妹。2013年12月に金委員長が夫を処刑した後、権力闘争の過程で力を失いつつあるとされ、消息が途絶えた。14年には韓国紙などが「自殺、あるいは心臓まひで死亡した」「アルコール使用障害がひどく、認知症も進んでいる」との死亡説が信じられていた。

映像から見える金慶喜氏の表情は悪そうに見えない。金委員長の妻・李雪主(リ・ソルジュ)氏と金与正氏の間の席で、約1時間半の公演を観覧したようだ。

権力闘争の過程で公の場に出てこず、こっそりと姿を消す北朝鮮要人は少なくない。ただ、粛清・処刑されたと報道されたものの、後に要職の肩書で復活することも一度や二度ではない。

19年2月、ベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談後に、成果なしの責任を問われたとして李善権(リ・ソングォン)・祖国平和統一委員会委員長(当時)など対米ラインが粛清、あるいは降格させられたとの報道が多く流れたが、実際には「仕事を外された」というだけで粛清はされていないことが判明している。しかも、李氏は1月に外相に就任していることが確認されている。

ただ、なぜこの時期に金慶喜氏が出てきたのかは、はっきりしない。膠着(こうちゃく)状態の対米関係や経済状況において、金一族の結束力を国内で誇示するためとの見方が有力だ。ただ、金慶喜氏が出てきたからといって、国民がどこまで結束するかは不透明だ。「金慶喜氏が元気になったので、現存するファミリーとして出席しただけ」という見方も、実は説得力があるのだ。

(浅川新介)

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