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2020年2月 9日号
金融「黒船来航」で再編避けられず ネット証券手数料ゼロ化相次ぐ
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金融「黒船来航」で再編避けられず ネット証券手数料ゼロ化相次ぐ

「再編は避けられそうにないですね。まさに体力勝負です」

ネット証券で一気に広がった投資信託や株式の売買手数料ゼロ化を受け、証券会社の幹部はこうつぶやいた。口火を切ったのは外資系大手のフィデリティ証券だった。

フィデリティは昨年12月から、取り扱う45の運用会社による656の投信すべてを対象に、顧客が売買する都度に生じる販売手数料を撤廃した。インターネットで取引し、運用報告書などを電子交付することが条件となるが、この決定が業界に与えた衝撃は大きかった。「黒船来航」と本邦系ネット証券幹部は悲鳴を上げたほどだ。

指をくわえていては、瞬く間に資金が流出しかねない。危機感を抱いたネット証券各社は一斉に売買手数料のゼロ化に動いた。12月2日には松井証券が投信手数料無料化を発表、これにマネックス証券や楽天証券が追随。大手ネット証券がほぼ無料で横並びとなった。さらに、このゼロ化の波は現物株や信用取引、ETF(上場投資信託)にも広がっている。

背景には「投資信託や信用取引は売買手数料以外の収入チャネルがあるので、追随しやすかった」(ネット証券幹部)という事情もある。投資信託は売買手数料以外に、運用手数料にあたる「信託報酬」がある。

しかし、各社が一斉にゼロ化に動いたことで、当座の収入減は避けられそうにない。証券会社全体の株式や投信の収入(2019年3月期)は、純営業利益の24%を占める重要な柱なだけに、「競争激化から脱落する証券会社は大手にのみ込まれかねない」と予想される。売買手数料ゼロ化は合従連衡の起爆剤となりかねない。

その一方でフィデリティは、投資や運用のアドバイスの対価として「運用助言手数料」を設け、新たな収益源にしたい考えを持っている。証券会社が、手数料収入のため短期売買を繰り返す〝ブローカー〟から脱却する日も近いかもしれない。(森岡英樹)

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