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2020年1月26日号
呪文のような謡と緩慢な所作で眠気誘う能を初心者にも優しく
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能は、伝統芸能の中でもっともディープな領域だろう。どこか神秘的で難解。一般からは縁遠い芸能ではないか。

しかし実はそんなイメージを覆すほど、愛好家の数は多い。国立能楽堂のチケットは毎月ほぼ即完売だし、各流派の能楽堂の公演もにぎわっている。それだけ魅力があるということだろう。ならば知らずにいるのは損というもの。入門書を読んでみれば、実際に観たくなる人も多いはずだ。

とはいえ能は、やはり稀有(けう)な芸能。初心者はいくら予習しても、実際の鑑賞に際しては心細くなる。「寝てもいい」とか「能楽堂の空気に身を任せればいい」とか言われても、緊張は解けない。

国立能楽堂の企画公演では、座席備え付けのディスプレーに解説や謡が字幕で表示されるので、初心者でもグッとリラックスできるのだが、特殊な例だ。もっと広まればいいと、かねて思っていたところ、同種のサービスが運用されていることを知った。

それが「能サポ」だ。能楽書籍の専門出版社・檜(ひのき)書店が、法政大能楽研究所の協力のもとにコンテンツを制作している。舞台の進行と連動して、画面が自動的にスクロールするので、初心者でも気軽に利用できる。

提供形態は2種類。一つは観客が開演前に、自分のスマホやタブレットにアプリをダウンロードして利用するもの=写真。あらすじ・見どころは、あらかじめホームページなどで読んでおき、鑑賞中は写真下のような解説が表示される。

もう一つは専用タブレットを貸し出す方式。こちらは、あらすじ・見どころ・解説に加えて詞章(せりふと歌詞)も見ることができる。初心者により優しい内容だ。

2017年3月から提供を開始し、昨年末までに54公演で使用されて、好評を得てきた。導入にためらいを感じる能楽堂もあるようだが、能の面白さを広く周知するために、普及を期待したい。(小出和明)

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