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2019年9月15日号
都道府県別「救命率」一挙公開!命に優しい自治体ランキング
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▼救急患者の搬送時間は平均39・3分

▼救急搬送時間最短の福岡県に学ぶ住民力とは?ワースト1位は...

9月9日は厚生労働省が定めた「救急の日」。普段は意識しないが、自分や家族に緊急事態が発生した時、命を左右するのが救急医療だ。実は消防隊、医療機関に加えて、住民の力があって初めて、「地域の救命率」が決まる。私たちに"できること"を知っておきたい。

頭が痛い、胸が苦しい、もしくは目の前で人が倒れた─身近で命に関わるような緊急事態が発生したら、119番へ連絡するだろう。すると国内では、いつでもどこにでも救急車が無償で駆けつける。しかし近年、救急車の現場到着時間が遅くなっているという。そうなると、何が起こるか。早く医療介入すれば助かるはずの人が「助からない」という事態につながるのだ。

救急患者の搬送時間は「救急車が(傷病者発生の)現場に駆けつける時間」と「現場から病院到着までにかかる時間」を合わせたトータルの時間で考えなければならない。言い換えると、「119番へ連絡して医師に引き継ぐまでの時間」で、これが1997年は26分だったが、最新データの全国平均は39・3分だ。20年の間に全国的に13分も延伸している。

そして驚くべきことに、この時間には地域差がかなりあるのだ。総務省消防庁の公表データをもとに、139ページに都道府県別の救急搬送時間をグラフ化した。東京都は搬送時間が50分もかかり、全国でダントツのワースト1位だ。搬送に時間がかかる大きな要因としては、救急患者、すなわち救急車出動の激増が挙げられる。97年は全国で約348万件だった救急車出動件数が、2017年には約634万件にまで増えているのだ。東京都は全国最多で約79万件で、全国で2番目に救急搬送の多い大阪の約58万件を大きく引き離している(17年)。東京消防庁の独自資料では、特にこの10年で75歳以上の搬送が飛躍的に増加しており、救急患者が増加した主要因が高齢化社会であることを裏付けている。

ここで搬送時間が全国で最も短い福岡県に注目したい。福岡県は救急出動件数でみれば、17年が約26万件と飛び抜けて多くはない。東京都のおよそ3分の1、大阪の2分の1である。しかし、「人口1万人あたりの救急出動件数」は東京の584件と比べて、502件とそれほど大きな差はない。

それなのになぜ搬送時間が短いのか。その理由は後述するが、注目すべきは搬送時間の短さに加えて、福岡県の心肺停止患者の救命率(1カ月後の生存率)の高さだ。その値は約22%で、全国平均13・5%を大きく上回る。ちなみに、東京都は約11・8%だから、実に2倍近い。

心肺停止とは「意識なし、呼吸なし、循環なし(頸(けい)動脈がふれない)」の状態で、これらが全て戻ることを「救命率」という。心臓と呼吸が止まってから1分経過するとともに、救命率はみるみる低下してしまう。しかし119番に連絡をしてから救急車が現場に到着するまでにかかる時間は、全国平均で8・6分(17年)だ。現場が高層マンションの場合など、救急隊が現地に到着して傷病者に接するまでにはさらに時間を要することがある。そこで救命の可能性は、救急隊を待つ間に現場に居合わせた人(バイスタンダー)が応急手当てを行えるかどうかで大きく変わるのだ。具体的には質の高い心臓マッサージや人工呼吸を行ったり、傷病者にAEDを迅速に装着することになる。福岡県はこの"住民力"が優れているようだった。

◇救急車到着までにできること

その秘密が知りたいと、筆者は福岡県に飛んだ。そして救急医療に携わり、地域住民に啓蒙(けいもう)活動を行う医師や消防隊に「救急患者に遭遇した時」と「自分が救急患者になった場合」の正しい対応について聞いた。

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