◇爪を嚙む、髪の毛を抜くは自傷行為の始まり
「自分の人生を歩んでいこう」と踏み出し始める青春期に新型コロナがやってきた。友達、部活、恋愛、学校生活、進学、就職......。生活のあらゆる場面に制約がつきまとうコロナ禍で、子どもたちと、見守る保護者の心に何が起きているのか。
◇コロナ禍1年でストレス増 高校生の半数が「うつ症状」
「ある日、子どもの頭髪の一部が薄くなっていることに気づきました。受験を乗り越えて、昨年、大学に入学したのですが、新型コロナの影響でリモート授業が多く、友達もつくりづらいようです。元気そうにふるまっていても無理があるのかもしれません。自分で髪の毛を1本、また1本と抜いてしまうのです」
大学1年生になる娘を持つ高橋千佳さん(仮名)が打ち明けた。実は2年前、大学受験前にもストレスで髪を抜いてしまう「抜毛」をしていた。高橋さんは娘の健康を最優先に考え、娘と思春期外来のある精神科で相談。進路の見直しも行い、大学に合格した。新しい道で頑張ろうとしていた矢先に、新型コロナウイルスが大流行したのだった。
「抜毛は一時治まり、髪も生えてきたのですが再発。本来乗り越えられることがコロナ禍のストレスを受けて難しいのかもしれません。自分はオンラインだけの大学生活なのに、他大に進学した友達のInstagramではスポーツ系のサークル活動をしている写真があり、キャンパスライフが華やかに見えて、乗り遅れているような焦りもあるようです」(高橋さん)
新型コロナ感染症の流行による生活の我慢は1年以上続いている。成長過程の子どもなら期待して当然のこと――進学先など新しい環境で人と知り合う、興味があることに打ち込む、友達と話し込む、恋愛する、知らない場所に行く――に制約が出ている。コロナ禍での子どもの悩みは、大人の悩みとは違う複雑さがあるかもしれない。
「コロナの感染を少しでも抑えるためにあまり遊びに行ったり外食をしたりしないようにしているが、友達がSNSにあげているのを見るとモヤモヤする。一緒に行こうと誘われると上手(うま)く断れなくてどうしたらいいのか分からない」(女児/高校1年生/東京都)
これは国立成育医療研究センターが昨年11~12月に「コロナ×こどもアンケート 第4回調査」を実施したところ寄せられた子どもの声だ。アンケートの対象は小学1年生~高校生(相当)の子どもと、0歳児~高校生の子どもの保護者で延べ約5000人から回答があった。
とりわけ高校生の30%に「中等度以上のうつ症状」があるという結果が出た。これに軽度の「うつ症状」24%を加えると実に半数以上となる。うつ症状はイコールうつ病ではないが、「意欲が低下して好きなことが楽しめない」「集中できない」「食欲がない」「眠れない」などがあるということだ。青春に影はつきものとはいえ、衝撃の結果だ。アンケートの自由回答でも「今、楽しいことありますか?」(男児/高校3年生/東京都)、「死にたいとき、あなた達はどうする?」(男児/高校3年生/東京都)といった声が「全国のこどもたちに聞いてみたいこと」として挙がり、切実だ。